「好きが言えないのは、悲しいな……」
灰慈くんはわたしをしっかりと家まで送り届けてくれた。自室ベッドにごろんと寝転び、唇をつまんではひとりごちる。
我慢することが良い事なのか、普通の恋愛は我慢の上に成り立つものなのか、わたしがしたい恋愛って何なのか、考え始めるとまとまらなくて眠れなくなった。
灰慈くん、という存在が安眠には一番効果的なのに。
「(だめだ、ねむれない)」
この世界に好きや愛しているの言葉があって良かった。ストレートな気持ちを、直接伝えることが出来る。
他には何があるのかな?
……どうやって好きを伝えることが出来るのかな。
手紙?歌?
「(灰慈くん、歌、上手なのかな……?)」
わ、絶対上手。上手じゃなくても良い。好きな人の歌を聞けるだけで恋する乙女は嬉しいものだ。
思えばカラオケに行ったことがないから、今度誘ってみようかな?
二人で行けば灰慈くんの歌声を独り占め出来るけれど、わたしも歌を披露しなきゃいけないというトラップもある。
わたしは司会か、バックダンサーでいい。なんとか灰慈くんのソロコンサートになるようにとあれこれ考えているうちに、何時しか眠りについた。



