メルティ・エモーション



灰慈くんの答えが出るまでの解答式、どれが正解なのか見当すらつかない。どこから導き出せばいいのか、どんな法則をつかえばいいのか、灰慈くんはやさしいけれど、その近道は教えてくれない。


その日の夜、約束通り灰慈くんは、いつもより少し早めに着信をくれた。スマホが灰慈くんの名前を映し出すだけでわたしの心臓は飽きずにきゅうっと締め付けられるし、見たからには一秒でも早く出なければと思ってしまう。

──しかし、今日は別の意味でドキドキしていた。

灰慈くんの声を聞いただけで「かっこいい」とか「好きだな」って、わたしの意志とは関係なく言葉が出てきちゃうに決まってる。

悩んでいると灰慈くんの着信が消えちゃって、「ああっ!」と落胆していれば、メッセージが届いた。

《起きてるなら窓の外見て》

窓の外?

立ち上がり、カーテンを開いた。二階にあるわたしのお部屋から家の外を見下ろすと、あまりに恋しいからか門の付近に灰慈くんの幻像を見た。

「え」

まぼろしがわたしを見上げて手を振ると、すぐ、片手でスマホを操作した。直後、わたしの手の中でスマホが震える。

《もう寝る?》

まぼろし?ううん、現実だ!

《ねむくない!待ってて!》

慌てて外に出る準備をする。