「もっと上手に口説かなきゃ……」
「結局口説くんだ」
「青葉くん、練習していい?」
「なんで俺?」
「お願いします、飲むプリンおごるので!」
言い終わって、気づかされた。
灰慈くんは結婚後の甘やかし献立に買収されなかった。男の人は食べ物に心惹かれないのかもしれない。
同じ日に二度も同じ轍を踏むなんて、おまえ成長しないな、と心の中で、意地悪なお兄ちゃんに馬鹿にされた気がした。
頬杖をついた青葉くんは、どこか挑発的な笑みを浮かべる。
「絶対嫌だね」
ほらね、きっと男の子は食べ物には釣られないのだ。
「何だよふみ、浮気してんの?」
打ちのめされるわたしの真上でニヒルな笑みを浮かべるのは、同じクラスの友人の天くん、小鳥遊天鷹だ。天くんは灰慈くんのいとこで、ちょっとだけ苦手で、思わず、引け腰になってしまう。
「浮気じゃないよ!練習させてもらえないか、頼んでるの」
天くんは見た目がうるさい。銀髪のマッシュヘアーで、シャツのボタンは常に全開。Tシャツは黒が多いけれど、大体原色だ。
しかも、そんなに必要?って疑問に思うほどピアスも沢山つけていて、極めつけには全部の指に黒いマニキュアを塗っている。
「練習?おいおい颯斗〜〜〜。ふみ、思い込んだら超めんどくせえし、おまえ責任取れよ」
天くんは話を聞かないし、見た目もそうだけどとにかく、うるさい。



