灰慈くんの彼女らしき女の子は短いスパンで変化し、変わってしまえば、同じ人が隣に立つことは二度と無かった。
あんなに可愛かった人達にわたしが勝てる可能性はあるのだろうか。
灰慈くんが大人になったということは、あのひとたちも大人になったということだ。
「(勝てる見込み、無くない……!?)」
妄想まで卑屈になっていれば、青葉くんが教科書を閉じたらしく、パタンと静かな音がわたしの妄想を止めた。
「全力でぶつかって来てくれるの、俺は嬉しいけどな」
「(……嬉しい?)」
わたしが青葉くんの言葉を上手に飲み込めないのは、彼のアンサーが灰慈くんとは真逆の反応だからだ。
「青葉くんは嬉しいの?」
「うん。俺は嬉しい」
「でも灰慈くん、嬉しそうにしないんだよね」
「苦手な人もいるんじゃねーの」
確かに灰慈くんは嬉しそうにしない。どちらかと言えば呆れている。またある時は冗談にする。おおよそ全て、挨拶がわりに捉えているだろう。
……ということは、灰慈くんは、口説かれるのが嫌?
「そうなの……!?」
「知らない」
興味無さそうなトーンの青葉くんと違って、約半年間、灰慈くんを口説き続けたわたしにとって、青天の霹靂である。



