メルティ・エモーション

「は?どうやって口説いてるの」

青葉くんが興味を持つ。誰だって、他人が自分の趣味に興味を示せば饒舌になるだろう。

若干高校2年生のわたしが調子付くのは必然。

「今日もかっこいいね、から、結婚したいです、まで沢山レパートリーあるよ!今朝は指輪のサイズ教えてって口説いた」

今朝の幸福が再燃すれば楽しさが増す。そんなあたしの真横で、青葉くんは「極端すぎるでしょ」と失笑するし、りるちゃんは「うけるんだけど」と大袈裟に笑う。

「でも灰慈くん、全然釣れてくれないんだよね。取り合ってくれないというか、余裕というか」

「だろうね」

「(そうなんだ)」

わたしよりも普通の恋愛経験者であるりるちゃんが同調するから、ほかほかな気持ちが少しだけぬるくなる。勉強欲も同じように冷めてしまって、シャーペンをノートの上にコロンと乗せた。

わたしは、高校生の頃の灰慈くんをよく覚えている。

今思えば、彼は恋多き人だったのかもしれない。登下校中たまに出会す灰慈くんはよく、女の子と一緒だった。

憧れた。灰慈くんと同じ制服を着て、楽しそうに下校する姿に、小学生ながらに強烈な羨望を覚えた。