「(そうなんだ……)」
結婚できるかわからないけど、もしそうなった場合、灰慈くんが困る。
初耳情報をノートの端っこに書き足して、りるちゃんを見上げた。
……ということは?
「灰慈くんと結婚するために普通の恋愛を学んでみろってこと?」
「そういうこと!」
りるちゃんがサムズアップする。どうやら彼女は本気モードだ。どこが本気と言われると答えに迷ってしまうけれど、敢えて言うならば、りるちゃんの目が本気だ。瞬きの回数が少ない。
普通の恋愛、かあー……。
けれど合コンも、人見知りなわたしが参加して果たして楽しめるだろうか。
ひとり悩む。
「有村、そこ退いてくれない?」
りるちゃんの本気モードを解いたのは、青葉くんだった。二年生に進級して同じクラスになった青葉くんは、同じ高校に通うわたしの幼なじみと同じサッカー部、ということで、一年生のころから仲が良い貴重な男友達でもある。
「やだね。青葉がどっか行け」
りるちゃんは動こうとしない。
「俺の記憶が正しければ、そこ俺の席だった気がするんだけど」
けれども、青葉くんの方が正しい。
「ここは臨時で私の席になった」
青葉くんは正しいのに、りるちゃんは屁理屈を言う。
「あそ。で、久遠寺はなんで古典の教科書開いてんの?」
椅子に座ることをあっさりと諦めた青葉くんは、あたしの机に腕を置いて腰を下ろすと、その視線が机の上に広げられたノートを滑る。



