メルティ・エモーション


「(それはどういう種類の、やだ)」

天くんは幼なじみだけど、青葉くんとは、二年生のクラス替えで初めて同じクラスになった。天くんを通じて、一年の頃何度か話したことはあっても、今のような“二人きり”を許すような関係になったのは最近の話。

下校途中にワッフルサンドのワゴンを見つけて、食べたいけれど店主の人が見た目が怖い人に戸惑っていると、躊躇なく一緒に買ってくれる友人で。

委員会の用事だからと移動教室を迂回しても、なにも文句を言わない人で。

ついさっき、良い人認定した人で。

「(……あれ?そうだよね?)」

青葉くんがわたしをみつめる。限りなく黒に近い深い茶色。灰慈くんとは正反対の色。

何も言えずにいるわたしたちをスマホの通知音が遮った。

《会うって言ってたの、日曜でいい?》

それは灰慈くんからの返信で、朝の会話の続きだ。返事に迷う中、青葉くんが立ち上がった。

「ま、いいや。次のホームルーム何するか久遠寺知ってる?」

「知らない。席替えしたいなあ」

「残念。球技大会の選手決めがまだ終わってないから、それかな」

「知ってるのに、なんで聞いたの?」

「久遠寺の要望を知りたくて」

一瞬で空気が元に戻る。青葉くんはいつもこうだ。空気の緩急を付けるのが上手。わたしは知らない間に呑まれて、ちょっとだけ気まずかったものがいつの間にか元に戻されている。