「んでカムフラ的に別の可愛い女子の写真とか見つつ、三国ちゃんって体弱いんだーとかおばあちゃんっ子なんだーとか色々話だけ聞いてたわけよ。でもまー俺らみたいな不良が絡んでいい子じゃなさそうだし? ほっとけ? って話になって終わってたんだよね、これ俺らが高一のときの話だから三国ちゃんが中二のときの話」
「おい九十三」
「でもさー、正直この辺の細かい事情は知らないヤツのほうが多いワケ。だから大抵のヤツは『永人は妹の命の恩人の三国ちゃんがお気に入り』みたいな雑な知り方してる」
「本当に雑……」
命どころか学校生活さえ救っていない。針小棒大とはこのことだ。
「ちなみに『スキ』って噂もあったけど永人普通にカノジョ作ってるからナシってことになった、けどやっぱ群青に入れたから愛人呼ばわりされるようになった」
「……そこがそう繋がってたんですね……」
六月頃から聞かされていた噂の謎がやっと解けた。内実としては豊池さんが唯一友達として口にした私がどんな人間なのか気になっていたに過ぎないのに、傍から見ればただただ一人の年下の女子にご執心。そしてそんな内実なんて知り得ないのだから、そう見えていたとしても仕方がない。
「てか入学式とか? 誰が聞いてきたんだっけ、新入生代表の名前『三国』つってたぞってなって、三国ちゃんなのかな? ってのが俺らは気になってて。そしたら庄内とかが雲雀と昴夜にちょっかいかけに行ったからさあ、永人が詫びついでに見てくるつって、帰ってきたらなんか昴夜達とつるんでたんだけど一体なんだってなって」
……そっか、中学生の頃から知ってたってことはその頃には知ってたんだもんな……。話を聞けば聞くほど、するすると糸がほどけるように、今までの出来事が一本に繋がっていく。
蛍さんが私を気にかけてくれていたのは、豊池さんの一件があったから。桜井くん達が庄内先輩にちょっかいをかけられた次の週、わざわざ教室に来たのは庄内先輩の独断専行に対する謝罪だったとしても、私がいるのにも構わずあれやこれや喋っていったのは、桜井くん達だけでなく私にも関心があったから。ゴールデンウィーク中、悪ふざけをしていた桜井くん達を叱ったのも、桜井くん達から離れるように言ったのも、蛍さん達三年生が、中学生時点から、私は不良と関わるタイプの人間じゃないと認識していたから。
「ま、二年は三国の存在知りませんでしたけどね」
「あれ、お前三国ちゃん知ってるって言わなかったっけ?」
「違いますよ、見たことあるって言ったんすよ。三国、ばーちゃんとバイト先に来てたから」
常盤先輩のバイト先……? そんなところに行った覚えはない、と考えている途中で、タイムリーにも今日ここに来るまでに桜井くんの口から話が出ていたことを思い出した。
「……お好み焼きの……フクダ屋」
「それ。いっつも土曜にばーちゃんと来てたろ」
「……すみません常盤先輩の顔は覚えがなく……?」
「髪隠れてるしな」
そのお好み焼き屋の店員さんはみんな三角巾の要領で手ぬぐいを頭に巻いているので、髪型や髪色はお客からは分からない。常盤先輩のうっすらグリーンの髪色なんて、一度見てしまえば忘れたくても忘れられないはずなのに、実際には覚えがないのはそういうことだ。
「……じゃあ常盤先輩は私のことを知……?」
「いやバイトで見てるだけ? どっかで見たことあんなーと思ってたらバイト先に来てたヤツだって」
「おい九十三」
「でもさー、正直この辺の細かい事情は知らないヤツのほうが多いワケ。だから大抵のヤツは『永人は妹の命の恩人の三国ちゃんがお気に入り』みたいな雑な知り方してる」
「本当に雑……」
命どころか学校生活さえ救っていない。針小棒大とはこのことだ。
「ちなみに『スキ』って噂もあったけど永人普通にカノジョ作ってるからナシってことになった、けどやっぱ群青に入れたから愛人呼ばわりされるようになった」
「……そこがそう繋がってたんですね……」
六月頃から聞かされていた噂の謎がやっと解けた。内実としては豊池さんが唯一友達として口にした私がどんな人間なのか気になっていたに過ぎないのに、傍から見ればただただ一人の年下の女子にご執心。そしてそんな内実なんて知り得ないのだから、そう見えていたとしても仕方がない。
「てか入学式とか? 誰が聞いてきたんだっけ、新入生代表の名前『三国』つってたぞってなって、三国ちゃんなのかな? ってのが俺らは気になってて。そしたら庄内とかが雲雀と昴夜にちょっかいかけに行ったからさあ、永人が詫びついでに見てくるつって、帰ってきたらなんか昴夜達とつるんでたんだけど一体なんだってなって」
……そっか、中学生の頃から知ってたってことはその頃には知ってたんだもんな……。話を聞けば聞くほど、するすると糸がほどけるように、今までの出来事が一本に繋がっていく。
蛍さんが私を気にかけてくれていたのは、豊池さんの一件があったから。桜井くん達が庄内先輩にちょっかいをかけられた次の週、わざわざ教室に来たのは庄内先輩の独断専行に対する謝罪だったとしても、私がいるのにも構わずあれやこれや喋っていったのは、桜井くん達だけでなく私にも関心があったから。ゴールデンウィーク中、悪ふざけをしていた桜井くん達を叱ったのも、桜井くん達から離れるように言ったのも、蛍さん達三年生が、中学生時点から、私は不良と関わるタイプの人間じゃないと認識していたから。
「ま、二年は三国の存在知りませんでしたけどね」
「あれ、お前三国ちゃん知ってるって言わなかったっけ?」
「違いますよ、見たことあるって言ったんすよ。三国、ばーちゃんとバイト先に来てたから」
常盤先輩のバイト先……? そんなところに行った覚えはない、と考えている途中で、タイムリーにも今日ここに来るまでに桜井くんの口から話が出ていたことを思い出した。
「……お好み焼きの……フクダ屋」
「それ。いっつも土曜にばーちゃんと来てたろ」
「……すみません常盤先輩の顔は覚えがなく……?」
「髪隠れてるしな」
そのお好み焼き屋の店員さんはみんな三角巾の要領で手ぬぐいを頭に巻いているので、髪型や髪色はお客からは分からない。常盤先輩のうっすらグリーンの髪色なんて、一度見てしまえば忘れたくても忘れられないはずなのに、実際には覚えがないのはそういうことだ。
「……じゃあ常盤先輩は私のことを知……?」
「いやバイトで見てるだけ? どっかで見たことあんなーと思ってたらバイト先に来てたヤツだって」



