荒神くんが、豊池さんを虐めてた……? 今度こそ人違いじゃないですかと聞き返したいくらい、私の知っている荒神くんからは想像もできない話だった。荒神くんが……、豊池さんの顔に画鋲を刺していたとしたら……、金輪際関わり合いになりたくない。今はしてないとか反省してるとか、そんなレベルの行為じゃない。いくら中学生だったとか精神的に子供だったとか言ったって限度がある。他人の顔に画鋲を刺すなんて、未熟を言い訳に出てくる発想じゃない。
愕然としている私と同じく、桜井くんも口を開けたまま呆然としている。
「……舜が女子の顔に画鋲刺してたらマジで絶縁できんだけど」
「いやどこまでなにやってたのか知らねーけど。あの性格見てたら、周りがキモイだのキタネーだの言ってんのに合わせて笑ってたんじゃねーのって感じはするけどな」
……確かに荒神くんのキャラクターを見ると朱に交われば赤、程度 (と言ってはいけないけど)な気はする。ほんの少し安堵する一方で、それでもそれは推論に過ぎないせいで微妙な蟠りも残る。
「知らね、俺もあんま興味なかったから聞いてねーし」
「……でも、その、虐めてた男子の一人だっていうのはなんで分かったんですか?」
「分かったつか、俺が殴り込んだ後にうちまで謝りに来たんだよな。すいません妹虐めてましたって」
「……殴り込……?」
謝りに来たという殊勝な態度よりも気になるワードが聞こえた。殴り込んだとは何事だ。
「三国ちゃん知らないの? 隣のクラスでしょ? 永人の妹が不登校になった後に永人の妹のクラスに南中の不良が殴り込んできたってニュースになんなかった?」
……一年三組に南中の不良が殴り込んできていた? そんなの知らない、というかそんな事実があったら絶対ニュースになっているはず──と狼狽しながら記憶を探っていて、思い出した。陽菜がそんな話をしていた気がする。三組で突然乱闘騒ぎが起きたとかなんとか……。
「……それ、蛍さんが……?」
「まあ何人かは《《や》》《《っ》》《《た》》。荒神はそん時殴った相手にいなかったと思うんだけど後から謝りに来たんだよな。んで終わってたんだけど、全然関係ないときにカツアゲされてるガキいんなと思ったら荒神で、ついでにお前のこと思い出したからお前のことも聞いて、写真何枚か貰った」
「思い出したのはウソウソ。永人、三国ってどんなヤツかなあってずっと言ってたから、わりとマジでストーカーばりに東中にも行ってた」
ゲシッと九十三先輩の膝が横から蹴られた。でも九十三先輩はいそいそと立ち上がり「おい九十三」蛍さんに止められるのにも構わず、私を挟んで蛍さんと反対側に座り直す。なんなら私の肩まで組んで「いやマジでね。マジでそこは気持ち悪かったら気持ち悪いって言っていいと思うんだけど」とわざとらしい耳打ちの仕草で、ただしボリュームは落とさずに続ける。
「永人の妹、マジで限界だったらしくて、限界直前に三国ちゃんに親切にしてもらったのマジで喜んでたんだって。だから三国ちゃんってどんな子なのかなーってたまーに思い出したように言ってて、でも最初あった情報は頭良くて可愛いって情報だけだったから『東中に可愛い女子いるらしいから見に行こうぜ』とか適当な口実作って俺らを付き合わせてて」
「おい」
愕然としている私と同じく、桜井くんも口を開けたまま呆然としている。
「……舜が女子の顔に画鋲刺してたらマジで絶縁できんだけど」
「いやどこまでなにやってたのか知らねーけど。あの性格見てたら、周りがキモイだのキタネーだの言ってんのに合わせて笑ってたんじゃねーのって感じはするけどな」
……確かに荒神くんのキャラクターを見ると朱に交われば赤、程度 (と言ってはいけないけど)な気はする。ほんの少し安堵する一方で、それでもそれは推論に過ぎないせいで微妙な蟠りも残る。
「知らね、俺もあんま興味なかったから聞いてねーし」
「……でも、その、虐めてた男子の一人だっていうのはなんで分かったんですか?」
「分かったつか、俺が殴り込んだ後にうちまで謝りに来たんだよな。すいません妹虐めてましたって」
「……殴り込……?」
謝りに来たという殊勝な態度よりも気になるワードが聞こえた。殴り込んだとは何事だ。
「三国ちゃん知らないの? 隣のクラスでしょ? 永人の妹が不登校になった後に永人の妹のクラスに南中の不良が殴り込んできたってニュースになんなかった?」
……一年三組に南中の不良が殴り込んできていた? そんなの知らない、というかそんな事実があったら絶対ニュースになっているはず──と狼狽しながら記憶を探っていて、思い出した。陽菜がそんな話をしていた気がする。三組で突然乱闘騒ぎが起きたとかなんとか……。
「……それ、蛍さんが……?」
「まあ何人かは《《や》》《《っ》》《《た》》。荒神はそん時殴った相手にいなかったと思うんだけど後から謝りに来たんだよな。んで終わってたんだけど、全然関係ないときにカツアゲされてるガキいんなと思ったら荒神で、ついでにお前のこと思い出したからお前のことも聞いて、写真何枚か貰った」
「思い出したのはウソウソ。永人、三国ってどんなヤツかなあってずっと言ってたから、わりとマジでストーカーばりに東中にも行ってた」
ゲシッと九十三先輩の膝が横から蹴られた。でも九十三先輩はいそいそと立ち上がり「おい九十三」蛍さんに止められるのにも構わず、私を挟んで蛍さんと反対側に座り直す。なんなら私の肩まで組んで「いやマジでね。マジでそこは気持ち悪かったら気持ち悪いって言っていいと思うんだけど」とわざとらしい耳打ちの仕草で、ただしボリュームは落とさずに続ける。
「永人の妹、マジで限界だったらしくて、限界直前に三国ちゃんに親切にしてもらったのマジで喜んでたんだって。だから三国ちゃんってどんな子なのかなーってたまーに思い出したように言ってて、でも最初あった情報は頭良くて可愛いって情報だけだったから『東中に可愛い女子いるらしいから見に行こうぜ』とか適当な口実作って俺らを付き合わせてて」
「おい」



