ぼくらは群青を探している

「……九十三さん、これ状況整理するとあれですか。永人さんがマジで三国のこと好きだったのにあれこれしてるうちに雲雀に寝取られたとか……」

「え、三国ちゃんまだ雲雀と寝てないよね!?」

「……はい?」

「よーし話がややこしくなった、黙れ」

「イッテェ!」


 九十三先輩は危うく縁側から叩き落とされるところだったけれど、平常運転だ。背中を擦りながら「てかなんで三国ちゃん永人のケータイの中身とか知ってんの? 見た?」またとんでもないことを言う。


「見るわけが……っていうか私が蛍さんのケータイを見る機会なんて……」

「寝てる間とかぐッ」

「なんでんなこと知ってんだ、三国」


 脇腹を押さえて悶絶する九十三先輩の肩を足蹴にしながら、蛍さんの目は打って変わって不審そうになっている。当然だ。


「蛍さんのあの元カノさんに、蛍さんのケータイに私の写真が入ってる写メを見せられたので」

「…………」


 そして今度は渋い顔になる。この数十分間、蛍さんは百面相で表情筋が大忙しだ。


「永人、ケータイ無防備すぎじゃない? シャワるときとかどうしてんの?」

「普通にカバンの中だろ」

「芳喜見習ったほうがよくないすか、アイツマジで手放さないし。つかロックくらいかけたほうが」

「えー、カノジョってケータイ見るんだ。気を付けよ」

「カノジョできてから心配しろよお」

「ツクミン先輩もいないじゃん!」

「……あの、そろそろなんで蛍さんが私の写真を持ってるかの話を聞いてもいいですか?」


 こんなにもすぐに脱線する有様でよく今まで集会なんてやってきたな……。というか、蛍さんが始めるまでろくに集会もしなかった理由が分かった。現に、集会で話を聞くとしてもその時間はせいぜい五分かそこら、先輩達の集中力はそれが限界らしい。


「あーね、写真はさすがにキモチワルいよね」九十三先輩は足を投げ出しながら「バレちゃってんだからもう話しちゃえばいんじゃない? 三国ちゃん超クールって話」

「九十三先輩、いい加減に私は話を進めたいんですけど」

「いい加減にとか言う? え、てかこれマジの話、永人が三国ちゃんお気に入りなの、三国ちゃんが超クールだからだよ?」


 また脱線したと思ったら今度は本線……? でも本線に戻ったからって何の話なのかは分からない。助けを求めて本人を見るけど、蛍さんは額に手をついて何か考えているか悩んでいるかのどちらかだ。


「てか英凜のその写真って中学のいつの?」

「え……っと一年か二年で、一枚は間違いなく二年だったかな」

「何枚持ってんの? お前。俺が知ってんの二枚なんだけど」

「そんなみんな知ってるものなんですか?」


 共有されている前提と、それゆえに着眼点がおかしい。九十三先輩は「俺が知ってんのは文化祭のっぽいやつと窓際でぼーっとしてるやつ。てかみんなが知ってんのもその二枚なんじゃね?」と教えてくれるけど、九十三先輩が知ってる写真の種類なんてどうでもいい。常盤先輩が「いや二年は知らないすよ、そんな永人さんのストーカー事情とか」とやや呆然としたまま首を横に振るのもどうでもいい。

 蛍さんは眉間に深い皺を刻んだままだ。九十三先輩も促しているわけだし、早く言ってしまえばいいのに、何をそんなに躊躇うことがあるのか。私達がじっと見つめても蛍さんは眉間に深く深く皺を刻んで瞑目したまま口を真一文字に結んで開こうとしない。


「んじゃ俺が言ってあげよっか? 三国ちゃん、永人の妹知ってる?」

「オイ」