蛍さんと違う意味で、聞き間違えるはずがない。ぶるっと肩が震えた。
「目上の人間待たせてんじゃねーぞ」
「だからすみませんって。ここらへんは不慣れなもんで」
新庄、だ。
なんで蛍さんと新庄が待ち合わせを? 待ち合わせをできるということは少なからず連絡手段があるということで、連絡手段があるということは顔見知り以上の関係性を裏付けるということで。いや、そんな理屈は全部ショートカットして――。
何より、新庄と手を組んでいたのは、蛍さんだった。
腕を掴まれて、自分が思考でいっぱいいっぱいになっていたことに気が付いた。ハッと顔を上げた先の桜井くんが「しっ」と人差し指を唇に当てる。
「言い訳してんじゃねーよ、テメェが呼び出したんだろ。さっさと要件言いな」
「相変わらず気短いですねえ、さてはモテないんじゃ?」
「だから、そういう話はどうでもいいんだよ」
「まあまあ、ここじゃ人来た瞬間に見られるんで、そっちで。おたくの大事な三国ちゃんがレイプされそこねたところで、どうすか?」
腕を掴まれていなければ、この瞬間に膝が砕けてその場に崩れ落ちてしまいそうだった。
「やだなあ、怖い顔しないでくださいよ。最後まではされてないでしょ?」
桜井くんに腕を引っ張られても動けなかった。桜井くんが首を横に振って、早く動かないと新庄と蛍さんがここに来ることを伝えてくる。そのくらい頭では分かってた。
でも、だって、あの蛍さんがあの新庄と裏で手を組んでるなんて、信じたくない。
確かに蛍さんは怪しかった、私の体が弱いなんて勘違いをしていた、私の中学生のときの写真を持っていたし、桜井くんと雲雀くんを群青に引き入れるために私を利用していてもおかしくなかった。理屈は通っていたし、現に私は疑っていた。
それでも、最初に新庄に拉致されたときに助けに来てくれたのに、ゴールデンウィークは助けてくれたのに、夏祭りでだって助けてくれたのに。筋の通らないことは嫌いだとか、誠実さで売ってるとか、そんな話をしてくれたのに。
ガクン、と体が無理矢理傾かされた。それに反応してなんとか足が動いた。桜井くんに腕を引っ張られるがまま社の反対側にまわって、そこで立ち止まった瞬間に膝から力が抜けて、桜井くんに抱き留められた。力強い腕にそのまま体を支えられて、音を立てないようにゆっくりと社の縁側に座らされる。桜井くんはそのまま私の前に立った。
「……やけに三国を気に入ってるらしいな。お前の隣には似合わねーぞ」
「そうですかねえ? 隣に立ったら意外とお似合いかもしれませんよ、ほら、あの子、ああ見えて蹂躙しやすそうだし」
……二人の声が近くなった。きっとこの社の真後ろで話しているに違いない。
「……夏祭りで三国を襲わせたのもお前だな」
「やだなあ、人聞き悪いこと言わないでくささいよ」
「惚けてんじゃねーよ。俺らに喧嘩吹っ掛けといて、その裏でうちの一年が襲われてて、んでレイプ犯だけ別チームだから関係ありません? ふざけてんのか?」
「ふざけてなんかませんよお。俺は最初から大真面目」
「へーえ。お前が群青のポストくれつってきたときはふざけてのかと思ったけどな」
最初から? 群青のポスト? ショックと恐怖に支配されていた頭がゆっくりと回り始める。そうだ、これはチャンスなんだ。蛍さんと新庄の関係と蛍さんの秘密を知る、最大のチャンス。
「いまはもう興味ありませんよ、残念でしたねえ」
「目上の人間待たせてんじゃねーぞ」
「だからすみませんって。ここらへんは不慣れなもんで」
新庄、だ。
なんで蛍さんと新庄が待ち合わせを? 待ち合わせをできるということは少なからず連絡手段があるということで、連絡手段があるということは顔見知り以上の関係性を裏付けるということで。いや、そんな理屈は全部ショートカットして――。
何より、新庄と手を組んでいたのは、蛍さんだった。
腕を掴まれて、自分が思考でいっぱいいっぱいになっていたことに気が付いた。ハッと顔を上げた先の桜井くんが「しっ」と人差し指を唇に当てる。
「言い訳してんじゃねーよ、テメェが呼び出したんだろ。さっさと要件言いな」
「相変わらず気短いですねえ、さてはモテないんじゃ?」
「だから、そういう話はどうでもいいんだよ」
「まあまあ、ここじゃ人来た瞬間に見られるんで、そっちで。おたくの大事な三国ちゃんがレイプされそこねたところで、どうすか?」
腕を掴まれていなければ、この瞬間に膝が砕けてその場に崩れ落ちてしまいそうだった。
「やだなあ、怖い顔しないでくださいよ。最後まではされてないでしょ?」
桜井くんに腕を引っ張られても動けなかった。桜井くんが首を横に振って、早く動かないと新庄と蛍さんがここに来ることを伝えてくる。そのくらい頭では分かってた。
でも、だって、あの蛍さんがあの新庄と裏で手を組んでるなんて、信じたくない。
確かに蛍さんは怪しかった、私の体が弱いなんて勘違いをしていた、私の中学生のときの写真を持っていたし、桜井くんと雲雀くんを群青に引き入れるために私を利用していてもおかしくなかった。理屈は通っていたし、現に私は疑っていた。
それでも、最初に新庄に拉致されたときに助けに来てくれたのに、ゴールデンウィークは助けてくれたのに、夏祭りでだって助けてくれたのに。筋の通らないことは嫌いだとか、誠実さで売ってるとか、そんな話をしてくれたのに。
ガクン、と体が無理矢理傾かされた。それに反応してなんとか足が動いた。桜井くんに腕を引っ張られるがまま社の反対側にまわって、そこで立ち止まった瞬間に膝から力が抜けて、桜井くんに抱き留められた。力強い腕にそのまま体を支えられて、音を立てないようにゆっくりと社の縁側に座らされる。桜井くんはそのまま私の前に立った。
「……やけに三国を気に入ってるらしいな。お前の隣には似合わねーぞ」
「そうですかねえ? 隣に立ったら意外とお似合いかもしれませんよ、ほら、あの子、ああ見えて蹂躙しやすそうだし」
……二人の声が近くなった。きっとこの社の真後ろで話しているに違いない。
「……夏祭りで三国を襲わせたのもお前だな」
「やだなあ、人聞き悪いこと言わないでくささいよ」
「惚けてんじゃねーよ。俺らに喧嘩吹っ掛けといて、その裏でうちの一年が襲われてて、んでレイプ犯だけ別チームだから関係ありません? ふざけてんのか?」
「ふざけてなんかませんよお。俺は最初から大真面目」
「へーえ。お前が群青のポストくれつってきたときはふざけてのかと思ったけどな」
最初から? 群青のポスト? ショックと恐怖に支配されていた頭がゆっくりと回り始める。そうだ、これはチャンスなんだ。蛍さんと新庄の関係と蛍さんの秘密を知る、最大のチャンス。
「いまはもう興味ありませんよ、残念でしたねえ」



