ただ、なんで急にそんな話に……、と手元を見ると「大学コード一覧」と書かれた冊子があった。これから連想ゲームをしたのだろう。
「そうなの? 三国ちゃん、頭良いからトーダイ行きそうだよね。今のうちにサイン貰っとこうかな」
「毎年数千人出るのにサインをもらうほどの希少価値ってあるんですか?」
「三国ちゃんはそういうこと言わなければモテると思うよ。俺はそういう三国ちゃんも好きだけどね」
手元にあるのでついパラパラと冊子を捲る。高校一年生の私が知ってる大学の名前なんて片手で数えられるくらいなので知らない大学ばかりだった。北海道から順番に並んでいるけれど、こんなものからどうやって選べというのだろう。情報の暴力だ。
「てかー、三国ちゃん大学どこ行くか決まってないなら志望校書くときどうしてんの」
「聞いたことある大学の名前を適当に書いてたんですけど……夏から先生に言われて東大と慶王と早田は書くようにしてます」
「え、先生が勧めてくんの? マジ? 俺就職しか勧められたことないよ」
ページを捲り続けていると、いくつか角の折れたページがあった。そのうちの一ページを開けば、鉛筆で丸をつけられている大学があった──一色市立大学。読んで字の如く一色市内にある大学で、地理情報としてその名前も場所も知っていた。大学名を五つ挙げろと言われたら間違いなく挙げるくらい、私の中では知名度がある。
「……九十三先輩って」
「ああ、そうそう。俺の学力じゃそこが限界」
限界ということは、そっか、九十三先輩の第一志望校は一色市立大学なんだ。ということは卒業しても九十三先輩は市内にいるんだ。……受かれば、だけど。
「どうかした?」
「……いえ、卒業しても九十三先輩は近くにいてくれるから寂しくないなって」
現状、群青で一番信用できて頼れる先輩が卒業しても近くにいてくれる。そう思うと嬉しくてつい笑みが溢れた。
「……ヤッバい」
九十三先輩は目を丸くして、ややあっていつになく真面目な顔つきになり、自分の胸元を握り締めた。
「いまのめちゃくちゃキュンときた。ギュッてしていい?」
「不整脈だ、病院行きな」
そして蛍さんが振り回すカバンに頭を叩かれ、再び死体のように参道に転がった。きっと転がったのは九十三先輩のリアクションの範囲内なのだろうけれど、耐性がなく驚いた胡桃は「えっ!」と悲鳴を上げている。本当にこの人達は暴力的なんだから……。
「ほら、飯行くぞ」
「三国、行くんだろ」
「……九十三先輩」
「ほっとけ」
「酷い酷い」むくりと起き上がった九十三先輩は私達の背後を振り向いて「おい昴夜、お前も行くんだろ?」
つられて振り向くと、桜井くんは石階段に座り込んだまま動こうとしていなかった。なんなら私達のほうを見向きもせず、なにか考え込むように頬杖をついてるだけだ。
「……ううん、やっぱいい」
「なんだよ」
「……胡桃送ってこと思って」
……珍しい提案だ。普段なら嫌がりそうなのに。目を丸くする私の後ろで九十三先輩が「代わってやろうか?」軽口を叩くも「だいじょーぶ」と生返事をするだけだ。
「昴夜、別にあたしいいよ?」
「んー、まあ、この間の英凜みたいなことあっても困るし。暗くなってきたし、送る」
私は別に帰り道に襲われたわけじゃないけど……。でも集会で夏祭りの話が出たばかりだし、胡桃が同じ目に遭ったら大事件だもんな……。
「……じゃあまた学校でね」
「んー」
「そうなの? 三国ちゃん、頭良いからトーダイ行きそうだよね。今のうちにサイン貰っとこうかな」
「毎年数千人出るのにサインをもらうほどの希少価値ってあるんですか?」
「三国ちゃんはそういうこと言わなければモテると思うよ。俺はそういう三国ちゃんも好きだけどね」
手元にあるのでついパラパラと冊子を捲る。高校一年生の私が知ってる大学の名前なんて片手で数えられるくらいなので知らない大学ばかりだった。北海道から順番に並んでいるけれど、こんなものからどうやって選べというのだろう。情報の暴力だ。
「てかー、三国ちゃん大学どこ行くか決まってないなら志望校書くときどうしてんの」
「聞いたことある大学の名前を適当に書いてたんですけど……夏から先生に言われて東大と慶王と早田は書くようにしてます」
「え、先生が勧めてくんの? マジ? 俺就職しか勧められたことないよ」
ページを捲り続けていると、いくつか角の折れたページがあった。そのうちの一ページを開けば、鉛筆で丸をつけられている大学があった──一色市立大学。読んで字の如く一色市内にある大学で、地理情報としてその名前も場所も知っていた。大学名を五つ挙げろと言われたら間違いなく挙げるくらい、私の中では知名度がある。
「……九十三先輩って」
「ああ、そうそう。俺の学力じゃそこが限界」
限界ということは、そっか、九十三先輩の第一志望校は一色市立大学なんだ。ということは卒業しても九十三先輩は市内にいるんだ。……受かれば、だけど。
「どうかした?」
「……いえ、卒業しても九十三先輩は近くにいてくれるから寂しくないなって」
現状、群青で一番信用できて頼れる先輩が卒業しても近くにいてくれる。そう思うと嬉しくてつい笑みが溢れた。
「……ヤッバい」
九十三先輩は目を丸くして、ややあっていつになく真面目な顔つきになり、自分の胸元を握り締めた。
「いまのめちゃくちゃキュンときた。ギュッてしていい?」
「不整脈だ、病院行きな」
そして蛍さんが振り回すカバンに頭を叩かれ、再び死体のように参道に転がった。きっと転がったのは九十三先輩のリアクションの範囲内なのだろうけれど、耐性がなく驚いた胡桃は「えっ!」と悲鳴を上げている。本当にこの人達は暴力的なんだから……。
「ほら、飯行くぞ」
「三国、行くんだろ」
「……九十三先輩」
「ほっとけ」
「酷い酷い」むくりと起き上がった九十三先輩は私達の背後を振り向いて「おい昴夜、お前も行くんだろ?」
つられて振り向くと、桜井くんは石階段に座り込んだまま動こうとしていなかった。なんなら私達のほうを見向きもせず、なにか考え込むように頬杖をついてるだけだ。
「……ううん、やっぱいい」
「なんだよ」
「……胡桃送ってこと思って」
……珍しい提案だ。普段なら嫌がりそうなのに。目を丸くする私の後ろで九十三先輩が「代わってやろうか?」軽口を叩くも「だいじょーぶ」と生返事をするだけだ。
「昴夜、別にあたしいいよ?」
「んー、まあ、この間の英凜みたいなことあっても困るし。暗くなってきたし、送る」
私は別に帰り道に襲われたわけじゃないけど……。でも集会で夏祭りの話が出たばかりだし、胡桃が同じ目に遭ったら大事件だもんな……。
「……じゃあまた学校でね」
「んー」



