ぼくらは群青を探している

 本当は気付いてたと見栄を張りたかったけれど、そんなものは能勢さんには見透かされてしまう気がした。


「過去形ってことは? 告白された?」

「……そう、です、けど……」


 ほら、やっぱり。そうやって細かい言葉選びから本当を見透かすんだから。

 能勢さんは煙草を指に挟んだ手を口へと運ぶ。その表情のうち、口元が覆い隠された。


「返事してないの?」

「……なんで分かるんですか?」

「だって今日、三国ちゃんと雲雀くんが話すの、全然見てないから。不自然なくらいお互いに避けてるでしょ」


 そもそも赤組と青組だし、例によって噂もあるわけだし、下手にさらなる誤解を与えないようにと懸念(けねん)して一緒にいないことも充分に考えられるはずだった。でも、まるでその反論を潰すかのように「ま、噂を気にしてるのかなと思ったけど、あんだけ三国ちゃんが周りから言われてるの見たら、雲雀くんなら飛んでくるでしょ。告白した後でそういう恩着せがましいことしたくないんだろうね、あの雲雀くんは」私だけでなく雲雀くんのことまで見透かして、私に、そんなことを教える。


「なんで付き合わないの? 嫌いじゃないでしょ、雲雀くんのこと」

「嫌いなわけないです、むしろ……、むしろ、雲雀くんのことは、すごく好きです」


 その内心を吐露(とろ)するのは、なにも恥ずかしくなかった。でもそれは、私が雲雀くんのことをそういう目で見ていないことの証明のようで、どこか申し訳なかった。


「でも……そういう、吊り合ってない感情で付き合うのって、失礼じゃないですか」

「そう? 仮にお互い好きだって明言してたって、それが本当かどうかなんて知りようがないでしょ? だったら、その宣誓に賭けるんだったら、真摯(しんし)に向き合う限りで、一方が好きで一方が好きじゃなくても、それは問題はないんじゃない?」


 どういう意味か分からず、眉間に皺を寄せたまま能勢さんの横顔を見つめてしまった。でも能勢さんは煙を吐きながら「それに、それは三国ちゃんの言い訳でしょ?」……どこか、刺すような目で、私を見た。


「そういう感情で付き合うのが失礼だからって、あたかも雲雀くんに気を遣うふりをして『オトモダチでいましょう』って本音(こたえ)に正当性を持たせたいわけでしょ?」


 ふり、なんかじゃ、ない。別に、雲雀くんに気を遣ってるふりをしたいわけじゃない。本当だ。傷付いてほしくない。雲雀くんを傷つけたくない。別に、それは、自分が悪いことをしていないと思いたいからとか、罪悪感を抱きたくないからとか、そういうことじゃなくて……。


「上手くやろうなんて考えちゃダメだよ三国ちゃん、恋愛なんてね、そんな綺麗なものじゃないんだから。人生二周したって、大抵の人間は恋愛なんて上手くやれないもんなんだから」


 それこそ、まるで二周目の人生であるかのような助言だった。


「……能勢さんは、上手くやりそう、ですけどね」

「俺だって別に、上手くなんかないよ。むしろ俺は自分は上手くないんだと思ってる。だから恋愛しないだけだよ」


 ……そういえば、能勢さんに特定の彼女はいないのだった。能勢さんは煙草から灰を落としながら、珍しくニヒルに口角を吊り上げる。


「もう一回聞いていい? なんで付き合わないの?」


 感情が吊り合わないのは失礼だという回答は却下、もう一度チャンスをあげる、そう言われている気がした。


「……今日中には、答えを出そうと思ってるので……」