ワル……ぶりたい……? 確かに能勢さんは形だけみれば優等生だけれど、いわゆるがり勉・学級委員長タイプに見えるわけではない。煙草を吸っている姿は……確かに大人の男性のように見えてその魅力を引き立てているけれど、ワルぶりたいというのはよく分からなかった。
「……喫煙者はそうでない人に比べて肺がんのリスクが高いとか、そういうのと比較してもワルぶりた……かったんですか?」
「法律じゃなくて欲求同士で比較するの、三国ちゃんらしいね。センスあるよ」ふ、と能勢さんは笑みを零しながら「煙草吸ったら明日死にますなんて言われたら考えるけど、肺がんで死ぬリスクって、三十代、四十代の話じゃないの? 俺は別に長生きしたいタイプじゃないから、そこは考えるに値しないリスクかな」
「……長生きしたいと思わないのと、三十代で死んでもいいと思うのとは別じゃないですか?」
「そうだね。それでも俺はそもそもあんまり拘りないっていうだけ」
拘り……。それが何への拘りか首を捻っていると「っていうか、永人さんの妹さん死んでるのは初耳だなあ」と気にかかっていたことを思い出させてくれた。
「……本当に亡くなってるんですか?」
「や、だから初耳だよ。何年も会ってないとしか聞いてないから、俺は。三国ちゃんが妹とだぶってるんじゃないっていうのは思ってたことだけど」
「……死んだことの婉曲表現」
「そうかもね。でも……両親が離婚して会ってないとか、その程度な気がするんだけどな。その程度って言っちゃいけないけど」
ふーっと煙を吐き出しながら、能勢さんも首を捻る。
「でも一応元カノだから話は永人さんから聞いたんだろうし……本当にそうなのかな」
「……仲良かったんですか? 蛍さんと元カノさん」
「どうだろ、学校で話してるのは見かけたけど。基本永人さんは群青にべったりだからね」
「……桜井くんと胡桃みたいな」
「ああ、そうそう、そんな感じかも。曽根先輩はあそこまで露骨っていうか、居場所取りに来る感じじゃなかったけどね。用事あるフリしてたまに来るけど、フリなのが見え見えっていう可愛らしい人だよ」
最後の一言が余計だった。日頃女子に対して、というか人に対してどういう目を向けているかがよく分かる。
「そういえば、桜井くんと胡桃ちゃんは結局どうなの、付き合ってるの」
……〝結局〟って、どういう意味なんだろう。〝結局〟というのは、なにか過程の積み重ねがあって辿り着く結論を求めるものだ。桜井くんと胡桃には――私にはないけど――その積み重ねがあるのだろうか。
「……なんで私に聞くんですか?」
「いま話が出たから聞いてみただけ。三国ちゃんと雲雀くんの噂もあったことだし」
「だからそれは……」
「でも雲雀くんが三国ちゃんのこと好きなのは本当でしょ?」
不意打ちに、ドッ、と心臓が跳ねた。その振動が塀越しに伝わってしまったかのように、能勢さんは煙草を咥えたまま微かに笑う。
「あのね、いくら優しいって言ったって、好きでもない女の子のために誰かを殴る男なんていないから。そりゃ女の子相手に手を上げただの、乱暴しただのってなれば話は別だけど。あの笹部くん、三国ちゃんにフラれた腹いせに喚き散らしただけでしょ、そんな相手殴るなんて、告白してるようなもんだから」
公開告白って噂はあながち的外れなものじゃないんだよ、と。
「で、その反応ってことは? 三国ちゃんもさすがに気付いてた?」
「……気付きません、でした」
「……喫煙者はそうでない人に比べて肺がんのリスクが高いとか、そういうのと比較してもワルぶりた……かったんですか?」
「法律じゃなくて欲求同士で比較するの、三国ちゃんらしいね。センスあるよ」ふ、と能勢さんは笑みを零しながら「煙草吸ったら明日死にますなんて言われたら考えるけど、肺がんで死ぬリスクって、三十代、四十代の話じゃないの? 俺は別に長生きしたいタイプじゃないから、そこは考えるに値しないリスクかな」
「……長生きしたいと思わないのと、三十代で死んでもいいと思うのとは別じゃないですか?」
「そうだね。それでも俺はそもそもあんまり拘りないっていうだけ」
拘り……。それが何への拘りか首を捻っていると「っていうか、永人さんの妹さん死んでるのは初耳だなあ」と気にかかっていたことを思い出させてくれた。
「……本当に亡くなってるんですか?」
「や、だから初耳だよ。何年も会ってないとしか聞いてないから、俺は。三国ちゃんが妹とだぶってるんじゃないっていうのは思ってたことだけど」
「……死んだことの婉曲表現」
「そうかもね。でも……両親が離婚して会ってないとか、その程度な気がするんだけどな。その程度って言っちゃいけないけど」
ふーっと煙を吐き出しながら、能勢さんも首を捻る。
「でも一応元カノだから話は永人さんから聞いたんだろうし……本当にそうなのかな」
「……仲良かったんですか? 蛍さんと元カノさん」
「どうだろ、学校で話してるのは見かけたけど。基本永人さんは群青にべったりだからね」
「……桜井くんと胡桃みたいな」
「ああ、そうそう、そんな感じかも。曽根先輩はあそこまで露骨っていうか、居場所取りに来る感じじゃなかったけどね。用事あるフリしてたまに来るけど、フリなのが見え見えっていう可愛らしい人だよ」
最後の一言が余計だった。日頃女子に対して、というか人に対してどういう目を向けているかがよく分かる。
「そういえば、桜井くんと胡桃ちゃんは結局どうなの、付き合ってるの」
……〝結局〟って、どういう意味なんだろう。〝結局〟というのは、なにか過程の積み重ねがあって辿り着く結論を求めるものだ。桜井くんと胡桃には――私にはないけど――その積み重ねがあるのだろうか。
「……なんで私に聞くんですか?」
「いま話が出たから聞いてみただけ。三国ちゃんと雲雀くんの噂もあったことだし」
「だからそれは……」
「でも雲雀くんが三国ちゃんのこと好きなのは本当でしょ?」
不意打ちに、ドッ、と心臓が跳ねた。その振動が塀越しに伝わってしまったかのように、能勢さんは煙草を咥えたまま微かに笑う。
「あのね、いくら優しいって言ったって、好きでもない女の子のために誰かを殴る男なんていないから。そりゃ女の子相手に手を上げただの、乱暴しただのってなれば話は別だけど。あの笹部くん、三国ちゃんにフラれた腹いせに喚き散らしただけでしょ、そんな相手殴るなんて、告白してるようなもんだから」
公開告白って噂はあながち的外れなものじゃないんだよ、と。
「で、その反応ってことは? 三国ちゃんもさすがに気付いてた?」
「……気付きません、でした」



