「ほら、あの牧落サン、陰口叩かれりゃ犯人見つけ出して大声で反論するタイプだろ? そういうヤツは言われねーんだよ、陰口叩くやつなんてもともと面と向かって言う度胸ねーヤツなんだから。お前はそうやってブツブツ呪うだけだから好きなだけ陰口叩けるんだよな」
それは……つまり私が陰気な性格だから仕方がないという話……?
「だから我慢すんじゃなくてちゃんと言い返せよ、連中図に乗るぞ」
「……言い返せる性格だったら苦労してないですけど……」
「んじゃ殴りなよ、口が駄目なら手!」
「もっとできませんけど」
いくら腹が立ったって殴りたいとは思わないので、もうそこから先輩達とは発想が違う。
「まあ俺らがいじったのは悪かったけど、噂は気にすんな。何言われてるのか知らねーけど」
「……笹部くんより雲雀くんが下だとか、私は普通科じゃないと一番になれないから普通科選んだんだプライドのクソ高い女だとか」
「笹部より雲雀のほうがいい男だよ、それは先輩が保証するって」
「全体的にただの僻みだな。お前、普通科も一緒の模試でぶっちぎってんだろ? 今年の特別科はザコって話まであんだ、どうせどっかのガリ勉女子が悔しさついでに流した噂だ、気にすんなよ」
「あとは私は蛍さんの愛人だったはずなのに雲雀くんと付き合うなんてどうなってるんだとか……」
「それはお前が正妻を断るから」
「真面目に話してるんですけど」
「……今度聞いたら否定しとく」
蛍さんと九十三先輩は、頻りに「いじりすぎて悪かったな」「もう野次に雲雀の名前出さないからさ!」野次を飛ばさないことは確約せずに、三年生の競技へと去っていった。でも反省はしてくれたらしいし、ご丁寧にアイスの棒まで回収してくれた。
でも正直、先輩の野次はデリカシーがなかっただけといえばそうだし、あれやこれやうるさかったのは特別科の人だけだったし、なんだかアイスまでおごってもらって悪いことをした……。つい一ヶ月前に雲雀くんの前で大人ぶったことを言ったくせに、結局私だってこの有様だ。反省しなければ。ただ、先輩達の前でブツブツと呪いを吐いたお陰でちょっとだけ気分はスッキリした。
ただ、その先輩達がいないタイミングに最大の難点が待ち構えていた。
昼休休憩後、午後一番の競技は色別演技だった。中でも青組が一番で、早々に演技を終えて生徒用の観覧席に戻って赤組を見る準備をしようとしていたとき「三国さんだよね?」なんて呼び止められた。ちょっとキツめの顔立ちをした綺麗な人で、青組のハチマキをしているけれど、知らない女子だった。明るい髪は細くて長く、後頭部でポニーテールになっていて、顔立ちも合わせてみるといかにも気の強そうなのが伝わってくる。しかも取り巻きみたいに友達も連れてない、完全に私と一対一だ。
「……そうですけど、どちら様ですか」
「三年、曽根眞理子」
フルネームを言われても知らないことには変わりない。ただこれだけ噂が蔓延している状況、そして三年生の女子が一対一でわざわざ話しかけてくる理由を考えれば、思い当たる属性は一つ。
「……蛍さんの元カノですか?」
「そういう話聞いてんだ?」
「あ、いえ。聞いてないです。ごめんなさい」
それは……つまり私が陰気な性格だから仕方がないという話……?
「だから我慢すんじゃなくてちゃんと言い返せよ、連中図に乗るぞ」
「……言い返せる性格だったら苦労してないですけど……」
「んじゃ殴りなよ、口が駄目なら手!」
「もっとできませんけど」
いくら腹が立ったって殴りたいとは思わないので、もうそこから先輩達とは発想が違う。
「まあ俺らがいじったのは悪かったけど、噂は気にすんな。何言われてるのか知らねーけど」
「……笹部くんより雲雀くんが下だとか、私は普通科じゃないと一番になれないから普通科選んだんだプライドのクソ高い女だとか」
「笹部より雲雀のほうがいい男だよ、それは先輩が保証するって」
「全体的にただの僻みだな。お前、普通科も一緒の模試でぶっちぎってんだろ? 今年の特別科はザコって話まであんだ、どうせどっかのガリ勉女子が悔しさついでに流した噂だ、気にすんなよ」
「あとは私は蛍さんの愛人だったはずなのに雲雀くんと付き合うなんてどうなってるんだとか……」
「それはお前が正妻を断るから」
「真面目に話してるんですけど」
「……今度聞いたら否定しとく」
蛍さんと九十三先輩は、頻りに「いじりすぎて悪かったな」「もう野次に雲雀の名前出さないからさ!」野次を飛ばさないことは確約せずに、三年生の競技へと去っていった。でも反省はしてくれたらしいし、ご丁寧にアイスの棒まで回収してくれた。
でも正直、先輩の野次はデリカシーがなかっただけといえばそうだし、あれやこれやうるさかったのは特別科の人だけだったし、なんだかアイスまでおごってもらって悪いことをした……。つい一ヶ月前に雲雀くんの前で大人ぶったことを言ったくせに、結局私だってこの有様だ。反省しなければ。ただ、先輩達の前でブツブツと呪いを吐いたお陰でちょっとだけ気分はスッキリした。
ただ、その先輩達がいないタイミングに最大の難点が待ち構えていた。
昼休休憩後、午後一番の競技は色別演技だった。中でも青組が一番で、早々に演技を終えて生徒用の観覧席に戻って赤組を見る準備をしようとしていたとき「三国さんだよね?」なんて呼び止められた。ちょっとキツめの顔立ちをした綺麗な人で、青組のハチマキをしているけれど、知らない女子だった。明るい髪は細くて長く、後頭部でポニーテールになっていて、顔立ちも合わせてみるといかにも気の強そうなのが伝わってくる。しかも取り巻きみたいに友達も連れてない、完全に私と一対一だ。
「……そうですけど、どちら様ですか」
「三年、曽根眞理子」
フルネームを言われても知らないことには変わりない。ただこれだけ噂が蔓延している状況、そして三年生の女子が一対一でわざわざ話しかけてくる理由を考えれば、思い当たる属性は一つ。
「……蛍さんの元カノですか?」
「そういう話聞いてんだ?」
「あ、いえ。聞いてないです。ごめんなさい」



