ぼくらは群青を探している

 そんなことがあったから、人から離れて噂から逃げようと木陰に避難してポツリと一人で体育座りしていると、ぞろぞろと蛍さん御一行が現れ、九十三先輩が「あれー、三国ちゃんじゃん。雲雀は一緒じゃないの?」最悪のタイミングで最悪の一言を放った。さすがの私もぷっつりと我慢の糸が切れた。


「あ、てか三国ちゃん徒競走一位だったよねー、約束どおりぎゅってしてあげよっか? 代わりにパンツの色教えイッテ」


 九十三先輩のおしりが蛍さんの足に蹴られた。でも蛍さんが怒るべきはパンツの話ではない。


「……さすがに先輩達もデリカシーなさすぎなのでは。いや先輩達の野次は可愛いものですけど」

「……ね、なんか三国ちゃんキレてない?」

「……なんか雰囲気おどろおどろしいな」


 コソコソと囁きあう九十三先輩と蛍さんを始め、先輩達はお互い眉間に皺を寄せている。でも眉間に皺を寄せたいのは私と雲雀くんだけであるべきだ。


「大体……雲雀くんは公開告白してないって否定したのに今度は雲雀くんのことフッたことになってるし、公開告白をしてないことが雲雀くんのことをフッたことになるって、本当に雲雀くんじゃないけど数学ができない人は黙っててほしいし」

「うーん、うんうん、そうだねー、雲雀は何もしてないんだよねー。ごめんねー、本当は分かってるんだけどねー、ついついからかいたくってねー」

「蛍さんの愛人説はどうなったのとか言われても周りが勝手に愛人説流したのに全然関与してない私にどうなったとか言ってくるの本当にどうかしてるんじゃ……今後もぜひともソース不明の言説に惑わされて人生迷ってしまえばいい……」

「あー、なんかそんな噂あったな。悪い悪い、そんな引きずると思ってなかったから面白がってほっといたんだけど」

「群青のメンバーだから群青の誰かと付き合ってるはずだって、群青のメンバーの選定基準を知りもしない人が言えることじゃないし、群青の誰かと付き合ってるって事実をあることにしたいから無理矢理こじつけてたお粗末な理屈にしか聞こえないし」

「ねー、三国ちゃん、難しい言葉使うのやめようよー、先輩分かんないよー」

「桜井くんと雲雀くんが近くにいたら何も言わないのに私が一人になったらこぞって取り囲んで好き勝手に『みんな言ってる』なんて免罪符掲げて喚くの本当に迷惑ですよね……そういう人のほうがよっぽど頭の治療が必要な異常者だと思うんですけど……」

「なんか言ってること怖くない? なに?」

「どうせろくに確認せずに自分の都合のいい想像と主観で補ったことをさも事実かのように語って、勝手に仕立て上げた不出来な人間像を現実の人間であるかのように思い込んで大声で喚いて、挙句偉そうに説教までしてきて人生恥ずかしいと思わないのかな……」

「あーーー、闇三国(やみくに)ちゃん出てきちゃったね、なにかイヤなことあったのかな、よーしよし、先輩に言ってごらん!」

「大体笹部くんの言動だって冷静に考えてみれば自分のプライド守りたかっただけだろうし、そんなことのために他人を(おとし)める行為のほうがよっぽどプライド高いことエベレスト山をも凌ぐ前人未踏の山のごとしじゃないかな」

「よし三国、落ち着け、先輩がアイスをおごってやろう。何を食いたい?」