いやだからそこは別に今大事なところではない……と声に出す前に、荒神くんはそのまま「んじゃまたねー」と赤組のラインに逃げてしまった。
手を振りながら、なんだか上手く誤魔化されてしまった気がする、と首を捻る。結局、蛍さんと荒神くんの関係はカツアゲを助け助けられというだけなのか?
ただ、その後はそんなことを考えている余裕はなかった。
まず、普段の生活で予想はできていたけれど、競技中は群青の先輩達から野次が飛んできた。徒競走で私がレーンに立つ少し前から「三国ちゃんじゃん、がんばれー」「一番取ったら九十三がぎゅってしてくれるってさー」「罰ゲームじゃん」「つか骨折れそう」「雲雀くんに殺されちゃーう」と本当にデリカシーの欠片もない野次だった。実は先輩達は私のこと嫌いなんじゃないかとさえ思えてきたし、実際に背後からは「やっぱり三国さんって群青の人達に無理矢理付き合わされてるんじゃ……」「あれいじめだよね……」と同情的な声まで聞こえてきた。もしかしたら本当にいじめなのかもしれない。陽菜は「相変わらず群青の先輩らお前のこと大好きだな!」なんて笑っていたけど、どこまでも陽菜らしい究極的にポジティブな解釈でしかなかった。敬老席のおばあちゃんに会いに行けば「英凜ちゃんは人気者じゃね」なんて嬉しそうに笑っていたけれど、感想が斜め上を行き過ぎて大気圏を貫く勢いだ。
男子の徒競走でも、雲雀くんがレーンに並べば「三国ちゃんにいいとこみせようとしてんじゃねーぞ」「お前なんて転んでしまえ」「イケメンを徒競走に出すな、陰キャの障害物へ行け」「一位になったら三国ちゃんがチューするよ」「二位以下は芳喜がチューするよ」もう何がなんだか分からない。なんでもいいから野次を飛ばしたいだけにしか聞こえなかった。でも雲雀くんは冷静さを欠くことなく一位だった。結果余計に先輩達が「つまんねー」「許せねー」「これだからイケメンは」と野次るだけだった。
そして競技さえなければ野次もなく平和に過ごせる、と思いきや、今度は特別科の女子らしき子達が入れ代わり立ち代わりやってきた。
「三国さん、雲雀くんのことフッたって本当?」「実はこっそり付き合ってる?」「蛍先輩の愛人説ってどうなったの?」「でも群青の誰かとは付き合ってるんだよね? じゃなきゃ群青メンバーなはずないし」「ていうか笹部くんのことフる理由がなくない?」「笹部くんが休んでるのどう思う?」「怪我って相当酷いの?」「雲雀くんさすがにやりすぎって止めなかったの?」
徒競走のゴール後の待機時間、競技と競技の間の休憩時間なおかつ桜井くんがいないタイミング、色別女子対抗競技の前後時間、いかにも関係者が近くにいないタイミングを狙いましたといわんばかりに、噂の真偽以外のことまで確かめられた。
そしてその噂の真偽以外といえば、謎の事実を前提とした謎のお説教までもが聞えよがしに囁かれていた。
「っていうか、三国さん、また笹部くんのことフッたんだよね? 笹部くんをフッたその場で雲雀くんと付き合うのはちょっと空気読めないっていうか」「笹部くんも雲雀くん相手じゃなきゃそんなにつっかからなかったんじゃないかな、ほら、雲雀くんって普通科の不良だし、笹部くんより下じゃん」「蛍先輩たちに気に入られてちょっと調子乗ったんだろうね」「普通科に入ったのも、特別科だと一番になれなかったからでしょ。プライド高そうだし」「清楚系で売ってたのに、失敗しちゃって可哀想」
そこまで来てしまえば、控えめに言って気分は最悪だった。
手を振りながら、なんだか上手く誤魔化されてしまった気がする、と首を捻る。結局、蛍さんと荒神くんの関係はカツアゲを助け助けられというだけなのか?
ただ、その後はそんなことを考えている余裕はなかった。
まず、普段の生活で予想はできていたけれど、競技中は群青の先輩達から野次が飛んできた。徒競走で私がレーンに立つ少し前から「三国ちゃんじゃん、がんばれー」「一番取ったら九十三がぎゅってしてくれるってさー」「罰ゲームじゃん」「つか骨折れそう」「雲雀くんに殺されちゃーう」と本当にデリカシーの欠片もない野次だった。実は先輩達は私のこと嫌いなんじゃないかとさえ思えてきたし、実際に背後からは「やっぱり三国さんって群青の人達に無理矢理付き合わされてるんじゃ……」「あれいじめだよね……」と同情的な声まで聞こえてきた。もしかしたら本当にいじめなのかもしれない。陽菜は「相変わらず群青の先輩らお前のこと大好きだな!」なんて笑っていたけど、どこまでも陽菜らしい究極的にポジティブな解釈でしかなかった。敬老席のおばあちゃんに会いに行けば「英凜ちゃんは人気者じゃね」なんて嬉しそうに笑っていたけれど、感想が斜め上を行き過ぎて大気圏を貫く勢いだ。
男子の徒競走でも、雲雀くんがレーンに並べば「三国ちゃんにいいとこみせようとしてんじゃねーぞ」「お前なんて転んでしまえ」「イケメンを徒競走に出すな、陰キャの障害物へ行け」「一位になったら三国ちゃんがチューするよ」「二位以下は芳喜がチューするよ」もう何がなんだか分からない。なんでもいいから野次を飛ばしたいだけにしか聞こえなかった。でも雲雀くんは冷静さを欠くことなく一位だった。結果余計に先輩達が「つまんねー」「許せねー」「これだからイケメンは」と野次るだけだった。
そして競技さえなければ野次もなく平和に過ごせる、と思いきや、今度は特別科の女子らしき子達が入れ代わり立ち代わりやってきた。
「三国さん、雲雀くんのことフッたって本当?」「実はこっそり付き合ってる?」「蛍先輩の愛人説ってどうなったの?」「でも群青の誰かとは付き合ってるんだよね? じゃなきゃ群青メンバーなはずないし」「ていうか笹部くんのことフる理由がなくない?」「笹部くんが休んでるのどう思う?」「怪我って相当酷いの?」「雲雀くんさすがにやりすぎって止めなかったの?」
徒競走のゴール後の待機時間、競技と競技の間の休憩時間なおかつ桜井くんがいないタイミング、色別女子対抗競技の前後時間、いかにも関係者が近くにいないタイミングを狙いましたといわんばかりに、噂の真偽以外のことまで確かめられた。
そしてその噂の真偽以外といえば、謎の事実を前提とした謎のお説教までもが聞えよがしに囁かれていた。
「っていうか、三国さん、また笹部くんのことフッたんだよね? 笹部くんをフッたその場で雲雀くんと付き合うのはちょっと空気読めないっていうか」「笹部くんも雲雀くん相手じゃなきゃそんなにつっかからなかったんじゃないかな、ほら、雲雀くんって普通科の不良だし、笹部くんより下じゃん」「蛍先輩たちに気に入られてちょっと調子乗ったんだろうね」「普通科に入ったのも、特別科だと一番になれなかったからでしょ。プライド高そうだし」「清楚系で売ってたのに、失敗しちゃって可哀想」
そこまで来てしまえば、控えめに言って気分は最悪だった。



