「え、日付と曜日まで覚えてんの? コワ……」
……雲雀くんには「さすが三国よく覚えてんな」くらいしか言われないし、桜井くんに至っては「そっかー!」でスルーするから麻痺していた。今度から日付と曜日はあまり言わないようにしよう。
「……で、荒神くんは蛍さんと知り合いなの?」
「えー、うん、知ってるっちゃ知ってる。昔、カツアゲから助けてもらったんだよね」
……何? 内心では荒神くんが一年生のスパイをやっているのでは、なんて警戒心もあったせいで面食らった。思わぬ方向の、ただ私達が知っている蛍さん像にピッタリの接点だった。
カツアゲされていたことを恰好悪いと思っているのか、荒神くんは私の目をまっすぐ見ることはなく、うろうろと炎天下の虚空に視線を彷徨わせる。
「中学のときなんだけどねー、あの人、蛍さんとよく一緒にいる、九十三先輩にも一緒に助けてもらった。他にも群青の先輩いたけど……だから前から知ってるし、めっちゃいい人だなーって思ってた。あとカッコイイなーって」
「……そう、なんだ……」
有り得る。カツアゲから助けてもらった、だから知ってるし、名前で呼ぶほど慕っている。話としては何もおかしくない。
「……蛍さんに、一年生の情報流してみたりする?」
「え、なにそれ、俺そんなスパイみたいなことしてるの? コワッ」
直球ストレートで聞いてしまったけれど、荒神くんはいつも通り笑っておどけるだけで、核心をつかれたような驚きはみせなかった。
「最初は昴夜の話とか聞かれたよ、芳喜さんにも誘ってって言われたし」
「ファミレスでその話してたね」
「そうだっけ? 相変わらずよく覚えてんな。そうそう、だから昴夜とか侑生の話はするけど、別にねー、俺一年生事情に詳しくないし。あ、例の笹部が三国にフラれた男だってのは知ってた、中学のときみんな知ってたしな」
「……みんな知ってたの?」
私や陽菜がいう「みんな」はせいぜい仲良しの五、六人しか指さないけれど、当然それが荒神くんの仲良しと被るわけではない。だからその「みんな」は私達がいう「みんな」とは違うはずなのに、荒神くんは「え、そうだよ?」とこともなげに頷いた。
「だって笹部、野球部だったじゃん? だから野球部の連中と飯食ってるときとかよく話してたらしいしー……俺も野球部には結構仲いいヤツいたし……」
「……恋愛話ってそうやってみんなに言いふらすものなの?」
「三国はそういうタイプじゃないのかもな、あと侑生も」
荒神くんは大して私のことを知らないはずなのに、そうやって的確に分類する。中学のとき見ていても、いつも誰かに囲まれていたし、荒神くんは私と真逆で「空気を読むのが上手い」人だ。
「でも笹部はそういうタイプだよ。誰かに言いたくて仕方がないんだよな、お喋りなんだ」
「……そういうもんかな」
「まー、笹部にビッチ呼ばわりされたのは気にしなくていんじゃね? 中二のときも、正直笹部じゃ三国に釣り合わなくね、って陰で言ってるヤツらいたし」
気にしてはいるけど、そこは別に今大事なところではない……と私が口にする前に、荒神くんはバンバンと私の肩を力強く叩いた。
「今の笹部、ちょっとイケてるよな。でも侑生に喧嘩売るのはやっぱ身の程知らずだよなあ。ちょっとイケメンって言われて調子乗っちゃったんだろうな、俺も中学のときそこそこ仲良かったから知ってるけど、笹部も悪いヤツじゃないんだよな」
……雲雀くんには「さすが三国よく覚えてんな」くらいしか言われないし、桜井くんに至っては「そっかー!」でスルーするから麻痺していた。今度から日付と曜日はあまり言わないようにしよう。
「……で、荒神くんは蛍さんと知り合いなの?」
「えー、うん、知ってるっちゃ知ってる。昔、カツアゲから助けてもらったんだよね」
……何? 内心では荒神くんが一年生のスパイをやっているのでは、なんて警戒心もあったせいで面食らった。思わぬ方向の、ただ私達が知っている蛍さん像にピッタリの接点だった。
カツアゲされていたことを恰好悪いと思っているのか、荒神くんは私の目をまっすぐ見ることはなく、うろうろと炎天下の虚空に視線を彷徨わせる。
「中学のときなんだけどねー、あの人、蛍さんとよく一緒にいる、九十三先輩にも一緒に助けてもらった。他にも群青の先輩いたけど……だから前から知ってるし、めっちゃいい人だなーって思ってた。あとカッコイイなーって」
「……そう、なんだ……」
有り得る。カツアゲから助けてもらった、だから知ってるし、名前で呼ぶほど慕っている。話としては何もおかしくない。
「……蛍さんに、一年生の情報流してみたりする?」
「え、なにそれ、俺そんなスパイみたいなことしてるの? コワッ」
直球ストレートで聞いてしまったけれど、荒神くんはいつも通り笑っておどけるだけで、核心をつかれたような驚きはみせなかった。
「最初は昴夜の話とか聞かれたよ、芳喜さんにも誘ってって言われたし」
「ファミレスでその話してたね」
「そうだっけ? 相変わらずよく覚えてんな。そうそう、だから昴夜とか侑生の話はするけど、別にねー、俺一年生事情に詳しくないし。あ、例の笹部が三国にフラれた男だってのは知ってた、中学のときみんな知ってたしな」
「……みんな知ってたの?」
私や陽菜がいう「みんな」はせいぜい仲良しの五、六人しか指さないけれど、当然それが荒神くんの仲良しと被るわけではない。だからその「みんな」は私達がいう「みんな」とは違うはずなのに、荒神くんは「え、そうだよ?」とこともなげに頷いた。
「だって笹部、野球部だったじゃん? だから野球部の連中と飯食ってるときとかよく話してたらしいしー……俺も野球部には結構仲いいヤツいたし……」
「……恋愛話ってそうやってみんなに言いふらすものなの?」
「三国はそういうタイプじゃないのかもな、あと侑生も」
荒神くんは大して私のことを知らないはずなのに、そうやって的確に分類する。中学のとき見ていても、いつも誰かに囲まれていたし、荒神くんは私と真逆で「空気を読むのが上手い」人だ。
「でも笹部はそういうタイプだよ。誰かに言いたくて仕方がないんだよな、お喋りなんだ」
「……そういうもんかな」
「まー、笹部にビッチ呼ばわりされたのは気にしなくていんじゃね? 中二のときも、正直笹部じゃ三国に釣り合わなくね、って陰で言ってるヤツらいたし」
気にしてはいるけど、そこは別に今大事なところではない……と私が口にする前に、荒神くんはバンバンと私の肩を力強く叩いた。
「今の笹部、ちょっとイケてるよな。でも侑生に喧嘩売るのはやっぱ身の程知らずだよなあ。ちょっとイケメンって言われて調子乗っちゃったんだろうな、俺も中学のときそこそこ仲良かったから知ってるけど、笹部も悪いヤツじゃないんだよな」



