ぼくらは群青を探している

 数日前、体育館で先輩達が雲雀くんのことを散々にいじり倒して帰って行ったときの様子が再び目に浮かんだ。結局、先輩達による噂の否定は功を奏したのか、はたまた新たな噂を作ってしまったのか……。


「でもよく分かんないから侑生に聞いたら蹴られた。ぶっちゃけ、侑生の好みのタイプって頭が良いヤツらしいから、三国結構あり得ると思うんだよねー!」


 ……荒神くんは、そろそろ周りの視線を集めていることに気付いたほうがいい。その口から出てくる名前で件の噂話だとみんな気付き、その真相はいかに、と聞き耳を立てているのが私にさえ分かる。


「え、それで、英凜さん的にはどうなんですか、侑生さんいいなー、みたいなのは」

「ところで荒神くん、黄組でよかったね、チア可愛いから」

「無視っすか!」


 中津くんは舎弟のつもりらしいし、ということは私より格下だと思っているのだろうし、もういい……。完全無視を決め込めば、荒神くんも私が答えないと分かればいいのか、一瞬眉を八の字にして仕方がなさそうな顔をしつつも「そ、黄色。男の黄組はマジで誰得だよ、女子のチアが可愛いだけだし、それ見るなら観客のほうがいいしさ」と彼らしい評価を口にする。ちなみに黄組には胡桃がいるらしい。


「ま、体育祭なんて群青メンツどれだけ集まるかにかかってるらしいからさ、今年は永人さんとかいる赤組が優勝決まってるようなもんだよな。黄色は全然群青の人いないから今年も負け確」

「群青の先輩、結構ばらけてるって聞いたけど」

「ばらけてるけど、赤と青が多いよ。つか棒倒しとか、なんか身軽そうな人のほうがいいじゃん? 赤組は永人さんがいるからさ、強いよなー」


 その赤組である陽菜と中津くんは「んじゃあたしらこっちだから」と整列のために私と荒神くんと分かれた。青組の私と赤組の荒神くんは整列場所が隣同士だ。


「……で、颯人(はやと)もいなくなったところで、ぶっちゃけ? 侑生とどう?」

「……全部雲雀くんが言ってるとおりだけど」

「え、じゃマジで告られたの」

「雲雀くん、そんなこと言ってないでしょ」

「んげ、三国相手にハッタリはだめかー」


 正直心臓は跳ね上がったし、もしかして荒神くんには言ったのかと疑いさえしたけれど、桜井くん相手と違って荒神くん相手には言う必要がない。内心では胸を撫で下ろした。


「んでも、実際侑生とどんな感じ? 仲良いじゃん?」

「……別に普通だと思うけど」

「あー、それ侑生が聞いたら傷付くヤツだ、侑生は多分普通より仲良いと思ってるのに」


 諫言(かんげん)という名のナイフがグサリと胸に突き刺さる。確かに告白した相手にとって自分が他の異性と同列だなんて言われたくない、か……。それはそうかもしれない……。


「てか三国って結局なんやかんや群青で上手くやってんだな、最初はどうなるかと思ったんだよなー、三国みたいなのが侑生と昴夜と仲良くやってるってヤバイんじゃないかって」

「……そういえば」


 そうだ、雲雀くんの告白騒動ですっかり頭から抜け落ちていたけれど、荒神くんにはひとつ大きな問題があったのだ。それを不意に思い出した。


「荒神くんって、蛍さんと知り合いなの?」

「え、この学校で永人さんのこと知らない人なんていなくない?」

「そうじゃなくて、個人的に。私が新庄に拉致されたときより前、一学期の実力テストの日、四月十四日金曜日の放課後に私と雲雀くんと桜井くんとファミレスでご飯食べたときより前から蛍さんと知り合いなんじゃないのかなって」