ぼくらは群青を探している

「俺も何かで読んで忘れてんのかな? この間も義務教育がなってないって言われたけど義務教育受けたはずだし……」

「なに、何の話?」

「桜井くんが性善説の話を知らなかったって話」

「あー、それは義務教育受けてないね」

「え、待って、そう言われたら分かるって。そうじゃなくて侑生らの言い方が悪くて」

「それが義務教育受けてねえんだよ」

「受けてるよ! 俺だって性善説って言われたら分かったよ!」


 海岸に戻ると、先輩達は元気よくビーチバレーをしていた。言語化できない雄叫びが聞こえてくるし、体は大きいし、髪は派手だし、正直近寄りたくない状態だった。駿くんはどこへ行ったのだろうと思っていると、パラソルの下で九十三先輩と一緒に休憩していた。因みにぐっしょり濡れていた。


「おかえり、一年ども」

「すみません先輩、駿くんを……」

「いーのいーの、俺いま荷物番。もうすぐ常磐(ときわ)と交代するから飯食おうぜ」

「おごってくれんの?」

「五人は無理だわ。受験生のバイトシフトなめんな」


 一人多いなと思ったら駿くんがカウントされているのだろう。やっぱり九十三先輩は優しい。

 そうこうしているうちに常磐先輩がやってきて九十三先輩と代わり「次、桜井だから早く食って戻って来い」と命じられた。


「私って荷物番に入ってます? 入れてもらって大丈夫ですけど」

「女の子一人が荷物番してもナンパされるだけで意味ないじゃん? 三国ちゃん結構バカだよね」


 気を遣って申し出たつもりが、九十三先輩に一蹴(いっしゅう)されたどころか罵倒された。しかもよりによって (と言うのは失礼かもしれないけど)パンツの話しかしない九十三先輩にバカ呼ばわりされるなんて……。ガーン、とショックを受けたまま固まってしまった。


「で、でも、荷物番って置き引きを警戒しているわけですから、見張るのが男子でも女子でも関係はないのでは」

「荷物と女子がいたら置き引き以外にも警戒することあるだろ。んでもって三国がナンパされたらどうなるか、来たときに分かったろ。下手しローテに三国入れるより人数要る」


 ……雲雀くんに論破(ろんぱ)されて黙った。確かに私はバカだった。しかもまたよりによって九十三先輩にポンポン、と(なぐさ)めるように肩を叩かれて余計に反省した。


「分かったら飯。腹減って死ぬ」

「……せめて誰かが荷物番をするときに私も一緒にするとか……」

「そんなに荷物番やりたい?」

「英凜的には自分だけ荷物番しないのが気になるんでしょ? 先輩達にさせてるから」胡桃の指摘はまさしく的のど真ん中を射ていて「侑生と昴夜がやるときに一緒にすればいいんじゃない。この流れだと、あたしも荷物番ないし」


 ……それもそうだ。二人で荷物番をするのは非合理的だけれど、それはさておき私の中で申し訳なさを減退させる名案だ。


「じゃ、私は雲雀くんの荷物番に付き合うよ」


 雲雀くんと胡桃は折り合いが悪い、それを考えるとその組み合わせはごく自然な消去法だった。ぱちりと雲雀くんと目が合う横で「じゃー、あたしは昴夜ね」と胡桃も頷く。


「え、それ俺がやってるときに提案してよ。マジ一人で暇だったつーか胡桃ちゃんが一緒にいるって何のご褒美タイム? え?」