ぼくらは群青を探している

 ぷかぷかと浮き輪に助けられながらのんびり胡桃と並んで浮島へ向かう、その時間は、頭がカンカン熱されていることを除けば、体はひんやり涼しいし、体力もそう要らないし、心地の良い時間だ。


「なんていうか、少年丸出し。子供っぽくない?」

「……桜井くんはそうだけど、雲雀くんはそうでもないかな。でも雲雀くんって胡桃の前でも大人っぽでしょ」

「んー……大人っぽいっていうか、つっけんどん? クールがさすがに行き過ぎてて逆に子供っぽくない? こう、演技感があるっていうか」


 雲雀くんなりに「嫌い」を前面に出さないための最大限の配慮なのだろう。そしてその配慮はちゃんと奏功(そうこう)しているらしい。「そう……かな……?」 お陰で反応には困った。


「でも普段すごくクールだから、不意に笑われるとドキッとするよね。意外と無邪気で可愛い感じの笑い方」


 脳裏にはつい二日前の出来事が浮かぶ。普段無愛想だからそう思えるのだろうか、本当に意外と可愛く笑う。こんなことを思っていると知られたら馬鹿にしていると勘違いされてしまいそうなので言えないけれど。


「え、あたし侑生が笑ったとこ見たことない」

「……私も二回くらいしかないから」

「やっぱ侑生、英凜のことは好きなんだろうなー。なんかあたしとはあんま仲良くなる気なさそうなの感じるし」


 雲雀くんの配慮は奏功している、という結論を半分だけ撤回することにした。なんとなく気付かれている。


「好きといえば、夏祭りのとき、笹部(ささべ)がごめんね? 昔、英凜がフッたんだって?」

「……いや本当にこっちこそごめんなさい」


 その話……。海の上でなければ額を押さえていた。桜井くんがクソダエェとか言わなければ、いや私が笹部くんをイケメンだと褒めていれば……? 会話のかみ合わせがどうズレていればよかったのかは分からないけど、少なくとも最悪のかみ合わせだったことには間違いない。


「笹部ねー、言われてみれば、クラスでも英凜の話してたんだよね。あたしが五組行った話したら『三国も五組だよな』とか。結構仲良いって言ってたんだけど、なんかねー、なにかあるんだろうなーと思ってスルーしてたんだけど。まさかフラれてたなんて」


 なぜその発言だけで笹部くんと私の間に何かがあると分かるのか。あまりにも摩訶(まか)不思議な論理関係に首を捻った。いや、胡桃はちゃんと感じることができるだけで、そこには論理なんてないのかもしれない。


「でもなんでフッちゃったの? 仲良かったんでしょ?」

「……仲、良かったのかな」


 やっぱり笹部くん側からはそういう認識らしい、と聞かされて頭痛がした。


「笹部くんと二人で遊ぶような仲じゃなかったし……。桜井くんとか雲雀くんは、ほら、二人でも一緒にいることはあるけど」

「え、侑生も?」

「実際になったことは多分ないけど、夏祭りとかで二人で放り出されても困らないとは思う。笹部くんは多分会話に困る」


 どちらかというと、雲雀くんは顔以外が男っぽすぎて、その意味で微妙に緊張する感じはある。桜井くんがいかにも同級生の「精神年齢ちょっと低めの男子」であるのに対して、雲雀くんは同級生なのに大人びすぎている。両親が離婚しているという事実が、雲雀くんをそこまで達観した性格にしてしまったのだろうか。ともあれ、最近雲雀くんの近くにいると落ち着かないのはそのせいな気がしてきた。


「んー、そっか。でもそうかも、笹部、野球の話しかしないしね」

「……胡桃とも野球の話するの?」