「……多分、間違いなく。……もしかしたら、先輩みんなグルなのかもしれないけど、その、群青の人間が深緋と組むにはそれなりの動機もあるだろうし、全員がグルになってるって可能性はさすがに排除していいと……。その意味では、例えば、九十三先輩は、信用できるんじゃないかな……」
九十三先輩は、桜井くんのいう「人酔い」を「体が弱い」には結び付けなかった。あの能勢さんですら、「体が弱い」と口を滑らせてしまうのだ、そのくらい、その情報は低価値に思えてしまう。そんな情報に対して、あの軽率な九十三先輩が慎重になれるだろうか。答えはきっとノーだ。
もちろん、九十三先輩のあの軽率さがすべて演技だという可能性もあるけれど。
雲雀くんは少し考え込むように携帯電話を開いて、閉じて、を繰り返した。
「……詳しいことはまた今度聞くとして、ま、九十三先輩が信用できるってだけでも充分かもな。あの人、あれでもゴリゴリの武闘派だし」
安堵したのも束の間、妙な形容が聞こえて眉を顰めた。武闘派……?
「……武闘派ってあの武闘派?」
「その武闘派。あの人、身長あるしガタイいいだろ」
頭の中には、会うたびにパンツの話しかしない九十三先輩のゆるい笑顔が浮かんだ。終業式の日にパンツの話をされなかったことが奇跡なくらいにはいつもパンツの話しかしない。でも言われてみれば、ティシャツ一枚なのにひょろっとして見えたことなんてないし、身長だって雲雀くんよりもずっと高い。蛍さんの隣にいるとまるで蛍さんが子供のように見える。
そっか、あの九十三先輩が武闘派か……。人は見かけによらない……。
パチンと雲雀くんは携帯電話を開いた。
「そうと決まれば、九十三先輩だな。幹部が出てくれば群青全体巻き込めるし、とりあえず電話口では蛍さんと能勢さんには黙ってくれって伝えて……」
「幹部? 蛍さんと能勢さんには連絡しないんだから出てくるもなにも……」
話が読めなくてまた眉を顰めてしまったけれど、今度は雲雀くんも眉を顰めた。
「お前、群青の序列知らねーんだっけ。九十三先輩、群青のNo.3だぞ」
……え……。頭の中にはまた「今日のパンツ何色ー?」と明るく笑う九十三先輩の顔が浮かんだ。あの先輩が、武闘派で、群青のNo.3……?
「……群青ってどうかしてるんじゃないの」
「そうだな。ま、あの人、あんなだけど喧嘩はクソ強ぇよ」
雲雀くんが電話をかけ始めたことで手持無沙汰になり、そこで初めて辺りを見回して──少し離れたところに男子が二人転がっていることに気付き、反射的に雲雀くんのティシャツの裾を掴んでいた。
「……九十三先輩すか、ちょい黙って聞いてほしいんですけど」
雲雀くんの片手に、あやすように、ぽんぽんと背中を撫でられた。ぎゅう、とティシャツの裾を掴みながら、じっと、ぴくりとも動かないその二人を見つめた。一人は仰向けに転がっていて、地面にじんわりと赤黒い血が広がっている。もう一人はうつ伏せで、顔が──花火に照らされて見えたほうの顔だった──横向きで、血まみれで、鼻が斜めに曲がっていた。そして、腕が、人体構造として有り得ない方向に曲がっている。
九十三先輩は、桜井くんのいう「人酔い」を「体が弱い」には結び付けなかった。あの能勢さんですら、「体が弱い」と口を滑らせてしまうのだ、そのくらい、その情報は低価値に思えてしまう。そんな情報に対して、あの軽率な九十三先輩が慎重になれるだろうか。答えはきっとノーだ。
もちろん、九十三先輩のあの軽率さがすべて演技だという可能性もあるけれど。
雲雀くんは少し考え込むように携帯電話を開いて、閉じて、を繰り返した。
「……詳しいことはまた今度聞くとして、ま、九十三先輩が信用できるってだけでも充分かもな。あの人、あれでもゴリゴリの武闘派だし」
安堵したのも束の間、妙な形容が聞こえて眉を顰めた。武闘派……?
「……武闘派ってあの武闘派?」
「その武闘派。あの人、身長あるしガタイいいだろ」
頭の中には、会うたびにパンツの話しかしない九十三先輩のゆるい笑顔が浮かんだ。終業式の日にパンツの話をされなかったことが奇跡なくらいにはいつもパンツの話しかしない。でも言われてみれば、ティシャツ一枚なのにひょろっとして見えたことなんてないし、身長だって雲雀くんよりもずっと高い。蛍さんの隣にいるとまるで蛍さんが子供のように見える。
そっか、あの九十三先輩が武闘派か……。人は見かけによらない……。
パチンと雲雀くんは携帯電話を開いた。
「そうと決まれば、九十三先輩だな。幹部が出てくれば群青全体巻き込めるし、とりあえず電話口では蛍さんと能勢さんには黙ってくれって伝えて……」
「幹部? 蛍さんと能勢さんには連絡しないんだから出てくるもなにも……」
話が読めなくてまた眉を顰めてしまったけれど、今度は雲雀くんも眉を顰めた。
「お前、群青の序列知らねーんだっけ。九十三先輩、群青のNo.3だぞ」
……え……。頭の中にはまた「今日のパンツ何色ー?」と明るく笑う九十三先輩の顔が浮かんだ。あの先輩が、武闘派で、群青のNo.3……?
「……群青ってどうかしてるんじゃないの」
「そうだな。ま、あの人、あんなだけど喧嘩はクソ強ぇよ」
雲雀くんが電話をかけ始めたことで手持無沙汰になり、そこで初めて辺りを見回して──少し離れたところに男子が二人転がっていることに気付き、反射的に雲雀くんのティシャツの裾を掴んでいた。
「……九十三先輩すか、ちょい黙って聞いてほしいんですけど」
雲雀くんの片手に、あやすように、ぽんぽんと背中を撫でられた。ぎゅう、とティシャツの裾を掴みながら、じっと、ぴくりとも動かないその二人を見つめた。一人は仰向けに転がっていて、地面にじんわりと赤黒い血が広がっている。もう一人はうつ伏せで、顔が──花火に照らされて見えたほうの顔だった──横向きで、血まみれで、鼻が斜めに曲がっていた。そして、腕が、人体構造として有り得ない方向に曲がっている。



