ぼくらは群青を探している

 ……犬も歩けば桜井くんと雲雀くんに当たる、と。桜井くんのいう牽制はやや自意識過剰感があるけど、雲雀くんのそれは因縁(いんねん)か言いがかりに等しい。でも笹部くんも桜井くんと雲雀くんを「あんな不良」みたいに言ってたから、全体的に見ればどっちもどっち……だろうか。


「ま、笹部もイケメンになったし、英凜にもっかい告ればいけるくらいに思ったんじゃねーの。そしたら隣に桜井がいるから、うわレベル違うってなったとか」

「え、本当? 俺のほうがイケメン?」

「え、それはそうだと思う。桜井、それはマジで自信持っていい、身長ちょっと足んねーけど、桜井と雲雀がうちの学年でツートップ」

「やった……! なんか余計なこと聞こえたけど気にしない……!」


 割り箸を握りしめてガッツポーズをする桜井くんは、確かに顔立ちはしっかりイケメンなんだよな……。言動の幼さのあまり忘れそうになるけど。


「つか、花火とかどこで見る? 俺は牧落達と場所が被るのは御免(ごめん)なんだけど」

「あー、あたしが知ってる穴場、笹部が胡桃ちゃん達に話してるかも」

「ああ、一昨年行ったところ……」

「紅鳶神社の社務所の屋根の上は?」

「三国と池田はのぼれねーだろ」

「え、二人だとそんなとこから見てんの? マジ?」


 とりあえずお箸でしか食べることができない焼きそばを消費した後、屋台が並ぶ道に戻って歩みを進める。紅鳶神社の近くに差し掛かったとき、カゴ巾着の中からバイブレーションが聞こえた。


「どした?」

「……九十三(つくみ)先輩からメール。あーそぼ、だって」

「無視」


 冷ややかな雲雀くんの声が迷いなく切って捨てる。陽菜は「ツクミ……ツクミ……」と反芻(はんすう)してきっと先輩の顔を思い出そうとしている。


「あー、三年の先輩か。九十三先輩の顔も結構好きなんだよなー、てかああいうお兄ちゃん欲しかった」

「え、さっき俺と侑生がイケメンツートップって……」

「一年のな。てか能勢さんが至高だから」

「能勢さんの色気は一生かかっても出せない気がする、マジで」


 九十三先輩からのメールには「こっちは永人と芳喜とその他。三国ちゃんたちどこ?」とも書かれているので、先輩に位置情報を送るべく辺りの目印を探す。駅から見て紅鳶神社の手前、チョコバナナと輪投げの屋台がある。


「……こんなところで合流もなにもできないよね」

「ツクミン先輩? いんじゃね、花火の場所決めてから連絡すれば」


 花火の場所が決まってから連絡します、いまは紅鳶神社手前です、と返事をしてカゴ巾着に携帯電話を戻した。


「てか花火の前にトイレ行こ、神社の休憩所みたいなとこが綺麗だからそこで」

「いいけど、そこ混んでね?」

「でも綺麗なんだってば」


 紅鳶神社は少し高台にあるので、境内は花火を見ようとする人で(あふ)れていた。二人が社務所の屋根にのぼろうとする気持ちも分からなくはない。

 そして神社が開放している休憩所は桜井くんの懸念(けねん)どおり激混みで、しかもありがちに女の列は男の列の三倍はある。


「男のほうが早いだろ、待っててー」

「おっけー、多分外いる」


 二人と離れた後、陽菜は「いやー、さっきの桜井、カッコよかったなあ」としみじみと呟いた。


「さっきのって、笹部くんへのアレ?」

「うん」陽菜は桜井くんの仕草の真似をして「惚れた女に振り向いてもらいからってちょっかいかけんのクソダセェってヤツ」