ぼくらは群青を探している



「三国、マジそういうとこ変わってないよな」でもやっぱり笹部くんの声は腹立たし気で「いい加減直せよ、そうやって空気読めないところ」


 ……笹部くんが言いたいのは、今の私が空気を読めないことではなく、きっと二年前の私が笹部くんの感情を全く察しなかったことだろう。

 でもそんなことを言われたって、分からないものは分からないのだから仕方がない。そして笹部くんは、そんな私を理解(わか)らずに告白したのだから、きっとどっちもどっちだと思うのだ。

 (いわ)れのない(そし)りでも受けた気持ちになって肩を(すく)めたけれど、笹部くんは取り合わず「つか花火の場所取りに行こうぜ」と(きびす)を返した。


「なァ、笹部ェ」


 その背中を桜井くんが引き留めるので驚いてその顔を見上げてしまった。桜井くんは早速雲雀くんから貰ったフライドポテトをまるで(くわ)え煙草のように(かじ)ったまま、その口角を好戦的に吊り上げた。


「イケメンだかなんだか知らねーけど、英凜に振り向いてもらえないからって突っかかるお前、クッソダセェよ」


 なん、だと……。唖然とするあまり、開いた口が(ふさ)がらなかった。

 そんなことを言われた笹部くんの顔は、この微妙な暗がりでも分かるくらい真っ赤に染まった。それを誤魔化すように笹部くんは素早く背を向け、胡桃が顔の前で両手を合わせて「ゴメンネ!」と口パクをしたのを合図に、三人揃って屋台の明るい道に戻ってしまった。

 呆然としている私の両脇では、雲雀くんがポンと桜井くんの肩を叩く。


「よく言った」

「なー、マジでムカつくよな、あの陰気なデカいやつ」

「え、いや、なに……? クッソダセェってなに……?」

「だーってアイツ、第一声で『てか三国ってあの桜井と付き合ってんだ』とか言うんだぜ。いやお前、ゼッテー思ってねーだろ。俺のこと牽制(けんせい)してーんだろってなんかその時点でムカついた」

「桜井くん……牽制なんて言葉知ってるんだ……」

「いま俺がちょっとカッコよかった場面だから! そういうこと言って茶化さないで!」


 ガジガジと何かの腹いせのようにポテトを食べ続けながら、桜井くんは「あと中学のときに仲良かった男子は自分と川西とかいう二人だけ、みたいな。なんだそれマウントってんのか、って」

「笹部、そんな話してたの? ま、アイツはそういうとこある、ガキだから」


 陽菜はカステラを口に放り込みながら「てかこれみんなで食べれると思ったから買った。適当に食って」と袋を差し出してくれる。お言葉に甘えて一個貰った。


「てかそっかー、笹部、イケメンになったのに未練タラタラか」

「そうは思わなかったけど……」

「そりゃお前は(にぶ)いから」

「つかフラれた女相手に罵倒してんのヤベェよな」雲雀くんもカステラを口に放り込みながら「フラれたのは自分の良さが伝わらなかったからとか思ってんだ、ああいう陰気なヤツは。くっだらねぇプライドだよな」

「な、なんで二人は初対面の笹部くんにそこまで……」

「俺はほら、牽制されてムカついたから」

「四対二でお前ら囲んでるような図がとりあえずムカついたし、これがあの笹部か、って見た瞬間にダサイ男だなって直感してなんかうざかった」