そのセリフから考えれば、きっとその顔は哀れみとか同情に近い気がした。
「……買いに行く……?」
「そうしなよ、三国ちゃん。悪いことは言わないから」
「……悪いことって」
能勢さんも、まるで宥めるか言い含めるかするかのような口調だったし、現に肩を軽く叩かれた。でも買い物……しかも水着か……。考え込んでしまったのを牧落さんはなにか勘違いしたのか「あ、大丈夫、昴夜も行くし!」とよく分からないフォローをされた。白羽の矢が立った桜井くんは「え、俺?」と困惑した顔をする。犬ならきっとピンと耳が立っていたところだ。
「行くでしょ?」
でも牧落さんは有無を言わさぬ口調だ。
「ヤダよ?」そして桜井くんは頑なに首を横に振り「水着買いに行くのついて行くとか普通に恥ずかしいじゃん」
「でも私と二人だと英凜が気まずいんでしょ」
フォローの意味が分かった。でもそのフォローに使われた桜井くんは今までになく――いや、しいて同等の表情を挙げるとすれば、もう一度ラブホに行くと言われたときと同じくらいイヤそうな顔をしている。
「……マジで言ってんの? 彼女でも一緒に水着買いに行くなんて恥ずかしいからね? ぜってーヤダ」
「昴夜、そうやってこの間も行ってくれなかったじゃん」
「この間ってどれ」
「パティスリー・プリティに行こうっていったとき」
「いやだから? それ、胡桃が勝手に行きたいって言って俺がイヤだって言っただけじゃん。なんで断った俺が悪いみたいに言ってんの?」
パティスリー・プリティ……? 芸名か何かなのかなとでも言いたくなるほど奇天烈なお菓子メーカーの名前に眉を顰めていると、能勢さんが「ああ、あれね」なんて頷いた。
「……女子の中で流行ってるんですか?」
「三国ちゃん、自分も女子でしょ。一色駅の東口から隣の駅に行く途中くらいのところにある少女趣味なカフェなんだけど、スイーツが小物みたいに可愛いからホワイトデーのお返しとかに人気ってわけ」
能勢さんの分かりやすい説明になるほどと頷いた。そして能勢さんのキャラクターから、ホワイトデーに数多の女子からそれを強請られているのも想像がついた。だからこそそこまで詳しいのだろうけれど。
「確か永人さんが別れた原因もそれですよね?」
「はい?」
ただ、思わぬ話題に頓狂な声が出てしまった。少女趣味なカフェと永人さんが別れる、その間にある論理が理解できない。訝しげな顔をする私を見てか、蛍さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……原因じゃねーよ。ほら女子って積み重ねで爆発すんだろ」
「……そうなんですか?」
能勢さんの目が、一瞬動いた。でもその視線の先に何があるのか分からなかったくらい、その動きは一瞬で、すぐに蛍さんに向けられる。
「まあ大抵の女子はそうだよね。永人さんの元カノも例外ではなく」
「え、で、永人さん、それでフラれたイタイッ! それ勉強してない人用じゃん!」
ツカツカと歩み寄った蛍さんはバシィッとハリセンで桜井くんの横面を叩いた。相当強く叩かれたのだろう、桜井くんは頬を押さえながら涙目だ。蛍さんはその目を冷ややかに細める。
「うるせーな関係ねーだろ。じゃあお前はプリティなんてクソ寒い名前の店に入れんのか、あん?」
「俺そんな話してなくない?」
「……お店に入らなかっただけでフラれたんですか?」
「……買いに行く……?」
「そうしなよ、三国ちゃん。悪いことは言わないから」
「……悪いことって」
能勢さんも、まるで宥めるか言い含めるかするかのような口調だったし、現に肩を軽く叩かれた。でも買い物……しかも水着か……。考え込んでしまったのを牧落さんはなにか勘違いしたのか「あ、大丈夫、昴夜も行くし!」とよく分からないフォローをされた。白羽の矢が立った桜井くんは「え、俺?」と困惑した顔をする。犬ならきっとピンと耳が立っていたところだ。
「行くでしょ?」
でも牧落さんは有無を言わさぬ口調だ。
「ヤダよ?」そして桜井くんは頑なに首を横に振り「水着買いに行くのついて行くとか普通に恥ずかしいじゃん」
「でも私と二人だと英凜が気まずいんでしょ」
フォローの意味が分かった。でもそのフォローに使われた桜井くんは今までになく――いや、しいて同等の表情を挙げるとすれば、もう一度ラブホに行くと言われたときと同じくらいイヤそうな顔をしている。
「……マジで言ってんの? 彼女でも一緒に水着買いに行くなんて恥ずかしいからね? ぜってーヤダ」
「昴夜、そうやってこの間も行ってくれなかったじゃん」
「この間ってどれ」
「パティスリー・プリティに行こうっていったとき」
「いやだから? それ、胡桃が勝手に行きたいって言って俺がイヤだって言っただけじゃん。なんで断った俺が悪いみたいに言ってんの?」
パティスリー・プリティ……? 芸名か何かなのかなとでも言いたくなるほど奇天烈なお菓子メーカーの名前に眉を顰めていると、能勢さんが「ああ、あれね」なんて頷いた。
「……女子の中で流行ってるんですか?」
「三国ちゃん、自分も女子でしょ。一色駅の東口から隣の駅に行く途中くらいのところにある少女趣味なカフェなんだけど、スイーツが小物みたいに可愛いからホワイトデーのお返しとかに人気ってわけ」
能勢さんの分かりやすい説明になるほどと頷いた。そして能勢さんのキャラクターから、ホワイトデーに数多の女子からそれを強請られているのも想像がついた。だからこそそこまで詳しいのだろうけれど。
「確か永人さんが別れた原因もそれですよね?」
「はい?」
ただ、思わぬ話題に頓狂な声が出てしまった。少女趣味なカフェと永人さんが別れる、その間にある論理が理解できない。訝しげな顔をする私を見てか、蛍さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……原因じゃねーよ。ほら女子って積み重ねで爆発すんだろ」
「……そうなんですか?」
能勢さんの目が、一瞬動いた。でもその視線の先に何があるのか分からなかったくらい、その動きは一瞬で、すぐに蛍さんに向けられる。
「まあ大抵の女子はそうだよね。永人さんの元カノも例外ではなく」
「え、で、永人さん、それでフラれたイタイッ! それ勉強してない人用じゃん!」
ツカツカと歩み寄った蛍さんはバシィッとハリセンで桜井くんの横面を叩いた。相当強く叩かれたのだろう、桜井くんは頬を押さえながら涙目だ。蛍さんはその目を冷ややかに細める。
「うるせーな関係ねーだろ。じゃあお前はプリティなんてクソ寒い名前の店に入れんのか、あん?」
「俺そんな話してなくない?」
「……お店に入らなかっただけでフラれたんですか?」



