追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

響さんは広い廊下を歩きながら

「花は平日の昼前にここに来て
掃除と昼ご飯を作ってくれたら良いからね」

そう言って数々の部屋を一通り見せられ
ここの棟だけでも十分広いな…と思っていれば

「あ…若、帰ってらしたんですか」

そう声がして後ろを振り向けば
そこには若い…若いと言っても20代前半?
私よりは少しは年上くらいだろうけど

爽やかな見た目の優しい雰囲気の人が
響さんを見ており…

「啓(けい)、お前も今だったのか」

響さんは私と話す時とは違う低い声で
啓…と呼んだその人にそう言うと

「はい。それよりその隣の女性って…」

啓さんはじっと私を見た。