追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…や、やだっ、それはいや、」

私が胸を押して離れようとすれば
響さんは私を離してはくれず
ますます力を込められる。

「お願い、家に返して下さい…。
弟が待ってるから…」

「…俺だって、花と離れたくないんだよ。
このまま一緒にいたい。
本当は家に返したくなんかないんだよ」

響さんはそう言って
私を見つめると唇に深いキスをした。

「ひ、響さ、やめ、」

荒々しいのに
どこか想いが込もった優しいキス。

響さんの事を思い出せない現状。
一瞬何かが頭を過ったのに
思い出そうとすれば拒否反応が出る。

響さんに哀しい想いをさせているのは
分かっているしお金だって貰っている手前
言う事は何でも聞かないといけない。

でも、海斗の事が頭に浮かんだ。

監禁なんかされたくない…。
海斗が1人になってしまう。

私は頭が混乱し、
気付けば涙が溢れていた。