追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

部屋の中に戻った途端、
お互い立ったまま再びぎゅっと抱き締められ

「あの響さん、
私…もう帰らないといけなくて」

私がそう言えば

「…分かってるよ。
でも今日はもう暗いし
…家の近くまで俺が送るから、
もう少しだけ抱き締めさせて」

響さんは何か不安なのか
ずっと強く私を抱き締めている。

「響さん、
私…何も言わずにいなくなりませんよ?
借金も代わりに返してくれたし…
生活費まで出してくれて…
この恩はずっと忘れませんから…」

私は響さんの不安を取り除こうと口にすれば

「…借金を代わりに返した事なんて
忘れて良いんだよ。
ただ…俺の事は忘れて欲しくなかった」

哀しそうにそんな事を言われた。

「…花に救われたのは俺の方だよ。
花の存在があったから俺は今こうして
生きていられる。あの時もずっと傍にいるって花は約束してくれたのに、それからすぐ
俺の傍から何も言わずにいなくなった。
…今だって花は突然何も言わずに出て行って…起きたらいなかったからまた凄く怖くなったんだよ…。やっと見つけてまた一緒にいられるって思ったのに、花は俺からすぐ離れようとする…」