追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「え…あ、ごめんなさい。
寝てたから起こしたら悪いと思って…。
外で海斗に電話掛けてただけですから、」

私がそう言えば

「…寝てても起こして良いから。
花は…また"あの時"みたいに急にいなくなりそうで…俺はそれがずっと怖いんだよ。
もう…花を失いたくない。
何も言わず俺から離れようとするな」

響さんは私を離さないと言わんばかりに
力強く抱き締めてくる。

その姿は
ただ抱き締めたいとかいう理由ではなく、
私が離れていくのが怖いといった
トラウマにも似た怯えた様子で…。

「"あの時"…?」

響さんの言う"あの時"というフレーズが
気になり思わず声に出せば

「…え、あ…何でもない。
とにかく部屋に戻ろうか…」

響さんも無意識にその言葉を言ってしまったのか自分でも動揺しており
私の身体を離すと今度は手を握って
一緒に部屋に戻った。