追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

外に出て目の前に広がったのは
田舎の山奥のような場所で…。

啓君は出来るだけ外の景色を見せないように
私の顔を胸に押し当てると
抱き上げたまま少し歩くと、
1台の車の後部座席に乗せた。

「…啓君、何でここに私がいるって
分かったの?」

私がポツリとそう聞けば

「…柚月を苦しめたアイツを許せなくて
柏木組に入ってからずっと調べてたからな。
ヤバい薬とか、色んな女をここに連れてきて
拘束してレイプしてた事も知ってたし、
組長に1回告発した事もあったけど…
あの時は取り合って貰えなかったからな」

「…」

「でも、今回若が本気で動いてくれたから
柚月をちゃんと救う事が出来た。
…俺は柚月の事を愛してるとか言いながら
結局は若には叶わないのかもな…」

どこか自嘲気味に笑いながら
私の頬を優しくさすった啓君。