追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…夜の仕事はもう辞めたから。
海斗が高校進学して卒業するくらいの
お金はあるよ…」

…実際本当に今はそれだけのお金はある。
響さんにお金を貰い続けてるし
もう借金もない…。

「どこからそんな金が出てくるんだよ…。
借金もまだ返してないのに…」

でも、海斗はまだ何の事情も知らない。

正直に全てを話せば
私が自ら身体を売っていた事も、
響さんに出会って仕事を辞める代わりに
お金を貰っている事も、
そして今仕事をしてない事も

全部嘘を吐いていた事を
話さなければならないから…。

「姉ちゃん、俺大丈夫だから。
働いてちゃんと借金返してから、
それからやりたい事は見つければいいし」

…海斗の優しさが痛い程胸に突き刺さる。

私はこんなに嘘を吐いてるのに
嘘偽りなく私に優しさを向けてくれる海斗。

私は…どれだけ愚かな人間なのだろう。
思わず全てを話したくもなってしまうが、

でもここで、
海斗の高校進学を絶対に諦めさせたくはない。

全てを話せば海斗は余計に進学はしない。
私に嘘を吐かれていた事を
気に病んでしまうかもしれず
状況が悪化しかねない…。

それなら
…ずっと愚かなまま嘘を吐き続けた方がいい。