追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…どうして、そう思うの?」

私が緊張しながらそう聞けば

「…啓は上手く誤魔化したつもりだろうけど
俺はゆづ以上に啓と何年も一緒にいるんだよ?
啓がゆづを想ってる事なんか
ずっと分かってたからね…」

響さんは私を離さないとでも言うように
ぐっと腰を引き寄せた。

「…でも啓の気持ちはもういいんだよ。
だって啓はゆづの事を"ただの幼馴染み"って
言い切ってゆづと他人の振りまでして
俺に譲ろうとしてるんだから。
…後はゆづの気持ちさえ俺に向いてくれたら
ずっと幸せになれるんだよ」

響さんはそう言うと
私の唇にキスをしようとしてきた為

「ちょっと待って…」

私は咄嗟に顔を背けてしまった。

そんな私の行動に響さんは
ピタリと動きを止めた。


…響さんのキスは何度も受け入れてきたのに

啓君の事を想い出してしまった今、
自然と拒んでしまう…。