追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「啓く、」

「俺がどんな想いで
あの時仲良くなっていった
柚月と若を見てたか分かるのかよ!?」

「…」

「俺は昔から若の言う事には逆らえない。
父さんが柏木組のヤクザの一員として働き始めてからずっと…同じ歳の若に気を遣って生きてきたんだよ。父さんの仕事を失わせたくなかった…お金が無くて強盗犯罪に手を染めて仕事も就けなかった父さんを拾ってくれたのは
柏木組だった…」

「…」

啓君と響さんは歳が1つ上。

…私は最初啓君をここで見た時
年上かと思う程、大人びて落ち着いていた。

でも…今思えばあの時公園で出会った啓君は
私と同じくらいの身長で
どこか無愛想で
からかうような子供らしい所もあった…。

でも…ここで再会した時の啓君は
公園で出会った時とは真逆の姿勢だった。

スラッと伸びた高い身長。
そして言葉遣いも綺麗で、優しく笑い
ずっと私を落ち着かせてくれた。

…だからこそ私は余計に
何も思い出す事は無かったし

私を目の前にしても表情を絶対に崩さない。
そんな啓君を見ても…あの時は
何も感じなかったのかもしれない。