追憶の愛情~想い出せない貴方へ~



私は記憶が蘇り

手を離して部屋から出て行こうとしていた
啓君の後ろ姿を見た。

…その背中は、
私が公園でずっと見てきた懐かしい背中。

必死に逆上がりの練習をしている啓君の
背中と足を私はずっと支えてあげていた。


"柚月、あんまり触らないでよ"

"どうして?"

"…好きになるから"

"えっ…?"

"嘘だよ"

"な、何!?その嘘、ひどいよ!"

"…ホントからかいがいのある馬鹿な奴"


啓君は素直じゃなくて
よくからかってくる男の子だった。

でも逆上がりが出来た日…
本当に恥ずかしそうに私を見て

"好きだから意地悪したくなる"

そう言った彼の表情に嘘はなかった。