追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…でも私、公園で出会った男の子の家に
上がった事があるよ。
その子の家、私の家の近所で…
普通の…マンションのワンルームだった」

私がそう言えば啓さんは
少し私から視線を反らした。

「…啓さんの家、私の家の近所だって
さっき言ってたよね?
それにその子はお父さんが最近ヤクザに
なったって言ってたし…。
それに響さんはヤクザの跡取りなんだから
普通のマンションには住まないよね?」

「…柚月さん、やめて下さいよ。
私は何の事だか分かりませんし
それは私ではありません。
頭がひどく混乱しているようですね…?
本当にゆっくり休んだ方がよろしいですよ」


…彼はまた、
何とか笑みを張り付けながら
そう言って私の手を離そうとした。