追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「ち、違うよ…。
ただ…手伝ってあげようかなって…」

「は?」

「いや…だってもう少しで出来そうだから…」

なぜその怖そうな男の子に声を掛けたのかは
分からないけど、
ふいに見せる孤独そうな表情が
どこか自分と被って気に掛かった。


「…どうでもいいから帰れよ。
早く帰らないと親心配すんじゃねぇの?」


その男の子はそう言うと
また鉄棒に向かおうとした。

「…貴方も親が心配するんじゃないの?」

私がそう聞けば

「俺は別に…。あんな家に帰りたくないし」

強がっているけど
どこか寂しそうに呟く彼もまた
私と同じで
家に帰れない理由があるのかもしれない…。

そう思えば何かしらの情が沸いてしまい

「ねぇ、見ててよ!」

私はそう言いながら海斗の手を離し
鉄棒を掴むと

勢いを付けて足を上げ
逆上がりをして見せた。