追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…でも本当なんですか?
その…若の想い人の柚月さんが…
過去に柏木組の奴にレイプされて記憶を失ってるかもしれないって…」


「…若と柚月さんの過去を
俺は知ってるからな。
あんなに愛してくれていた若を
何で柚月さん本人が忘れてるのか、
その理由が他に見当たらないしな…。
それに最近、"アイツ"の言動が気になる」


「"アイツ"…?」


涼は車を走らせながら怪訝な顔をしていた。

「…柚月さんが仕事に来る度に
俺らがいなくなる隙を見計らっているかのように最近ずっと若の住む棟をウロついている。
…アイツは昔から女遊びも激しかったようだし、隠れて薬もレイプもしていた過去もある。そして柚月さんの母親も男遊びが激しかったようだし、しかも今日柚月さんが混乱して俺を
拒絶した様子を見れば…組に関した怖い記憶を
思い出したのかもしれない」


啓が寝ている柚月を
どこか苦しそうな切なそうな表情を
しながらそう言えば…


「それなら尚更、
若に早く報告した方が良いですよ…!
アイツって誰なんですか…?」


涼はバックミラー越しに啓を見た。