追憶の愛情~想い出せない貴方へ~

「…お母さん?」

「うん…母さんの事。
姉ちゃん…母さんの事
ちゃんと覚え…てるの?」

海斗は言葉を詰まらせながらも
私にお母さんの事を聞いてきた。

「うん。それはもちろん…。
お母さんは…病気で亡くなったんだよね」

…私のお母さんはお父さんが仕事の都合で出張が多くなった日をきっかけに酒癖が悪くなり
金使いも荒くなっていた。

お父さんはそんなお母さんを見かねて
いっとき私と海斗を置いて別居していたけど

お母さんがアルコール中毒で亡くなり
お父さんが私達を育ててくれた。

でも…畳み掛けるように
私が高校3年生の卒業間近に
お父さんも急に脳梗塞で亡くなって…

その後お父さんが
多額の借金を抱えていた事を知って…


…あれ?でも、何でお父さんが多額の借金を?

お父さんは堅実に生きていた人だった。
節約もしてたし懸命に働いて
私達を養ってくれたのに
…どうして借金なんか。

あの時はとにかくお父さんが亡くなった事と
海斗を養う事、そして借金を返す事に必死で
そこまで考えていなかったけど…
よく考えればおかしい話で…。