追憶の愛情~想い出せない貴方へ~



その一方で

響と柚月がいるお屋敷の棟を
外からじっと見つめている1人の男がいた。


「あの女、まさか、あの時の…」


その男はポツリとそう呟くと
ちょうど玄関から出て来た啓に
声を掛けた。


「おい、啓、さっき若頭が手を引いて
連れて入ったあの女…まさか若頭の女か?」


啓はその男を疑うような目で見ると


「…見てらしたんですか?
まぁ…ただの"家政婦"ですけど?
迷ってたみたいだから手を引いて
案内してらしただけみたいですが…
それが何か?
若頭の事をあまり好いていない貴方に
何か関係があります?」


どこかトゲのある言い方で
啓は誤魔化すとその男の反応を見るように
じっと見た。