十二月中旬、私達は修学旅行で札幌に降り立った。新千歳空港から約四十分、札幌駅の外に広がる雪景色に、みんなははしゃいだ声を上げていた。チェックインを済ませてホテルを出た後は、私達のクラスでは昴夜が真っ先に外に飛び出て、歩道の脇に積まれている雪に飛び込んだ。
「きゃふー! つめたい!」
雪やこんこ、犬は喜び庭駆け回る、そのフレーズが頭に浮かんだ。金髪の大型犬が雪に埋もれてはしゃいでいるようにしか見えない。
「馬鹿じゃねーの、このクソ寒いのに」
それを本気で冷たい目で見ているのは、銀髪の、さながらニホンオオカミだ。でも侑生は寒がりなので耳当てまでしっかりして防寒している。ただ、耳当てに関しては昴夜もしていた。いわく「ばーちゃんに子供が頭を冷やすなって言われたから」と。寒さの厳しいヨーロッパでは、子どもが帽子または耳当てをしていないとお年寄りに注意されてしまう、というのは聞いたことがあった。
「侑生も飛び込もうぜ。そんで写真撮ろ」
「馬鹿じゃねーの」
「いいじゃん、俺達相棒じゃん」
「知らねーよ一人でやってろ。……オイ!」
昴夜と荒神くんが目配せし、本気で嫌がる侑生は雪山に放り投げられた。ボフンッと柔らかく雪に埋もれた侑生を、昴夜達が指差して笑う。
「三国の前だからってカッコつけてんなよ」
「そーだそーだ、侑生だって埋もれろ! そんで写真撮ろ!」
あ、怒ってる。笑っていた昴夜達は、ゆらりと雪の中から起き上がった侑生に胸座を掴まれ背中を蹴られ、雪の中に埋められるとおりこして顔から雪に突っ込まれた。
「うぶぶ、待ってたんま! 息できない!」
「しなくていい」
「死ぬから! ちょ、ホントに無理、助けて!」
「はー、男子は元気だよなー」
陽菜と一緒に、少し離れたところでそれを静観する。侑生も昴夜も制服を着ているから、多分シャツ以外の着替えは持っていないはずなのに、濡れることを厭わないなんて、さすが十七歳、若さがある。……いや何も考えてないだけかな。
「ね。あんな元気もうない」
「もうってなんだよ、ババアかよ」
「心は三十歳くらいだから」
「結構上だな!」
事実なのだけれど、陽菜は冗談にしか受け取らない。もちろん本気で受け取るほうがおかしいのだけれど。



