「……透冶が死んだ日、屋上に行ったのは」
「透冶が会計を誤魔化すわけがない。もし本当にやったんだとしても、一緒にやったやつがいて、ソイツらが突き落としたんじゃないかと思ったから」
「……お前が四月に二、三年の連中を殴ったのは」
「……透冶は生徒会の金を横領した挙句死んで責任逃れしようとしたクソ野郎だって言われたから。関わってたヤツらの名前もその時に聞いて、まとめてやった」
「……会計のことを知ってても鹿島から話を聞こうとしたのは」
「……俺が殴ったアイツらのうちの誰も、透冶が死んだ現場にいなかったって言ったから。でも役員徽章が屋上にあったし、生徒会費に関わることを鹿島が知らないはずがない。だったら、現生徒会役員は、形はどうあれ、透冶の死に関わってると思った」
松隆くんは黙り込んだ。私達が見守る沈黙の中で……ゆっくりと、桐椰くんから離れる。
ガラスの中に立ち尽くしていた桐椰くんは、少しだけ視線を彷徨わせて……「鹿島、」と涙を堪えるような声で呼ぶ。
「……お前、証人って、言ったよな。誰の、何のことだ?」
「お前が殴った三年の一人、牟田先輩のことだ。雨柳を唆した、当時の指定役員だ。雨柳の事件が起きて辞めさせた。彼が主導していたと自白したよ」
「……それがなんの証人になる」
「……連絡を受けたらしい」
三人の目が一斉に鹿島くんに向く。連絡?
「雨柳の直属の先輩だったからな。雨柳から『これから自殺します』と連絡を受けたんだと。最初は本当に尊敬していた、牟田先輩に憧れて会計役員に立候補した、横領なんてさせられて失望した、同時に逆らうことのできなかった自分に嫌気がさした……とね。牟田先輩は驚いて屋上に向かったらしいが、もう遅かったんだと。桐椰が見つけた徽章は牟田先輩のものだろう」
最後の会話はよく覚えてるらしいから聞けば答えるだろうよ、と鹿島くんは付け加えた。
きっと、それは、先輩に逆らうことのできなかった透冶くんの残した、最後の、呪いの爪痕。
誰も何も言わなかった。憤激して教室を飛び出してその牟田先輩を探しにいくわけでもない。ただ、自分達の知らなかった事実を、ただそのまま事実として受け止めようとするように、バラバラのまま佇んでいた。
ややあって、鹿島くんは「俺が知っているのはここまで」と降参するように両手を挙げた。
「雨柳の事件の真相は、そういうわけだ。……因みに、雨柳のお父さんが転勤したのは、雨柳のお父さんが申し出たからだ。一人息子を失った場所に留まりたくないから……なにより、幼馴染のお前達が辛い過去に縛られないでいいように、とね」
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