「これは衝撃の告白です! まさに激白! 予想だにしない事態に会場もどよめいています! 桜坂さんいかがですか!」
「え、いかがと言われましても……」
予想外なのは私も同じくなのですが。白い靄に持って行かれそうになっていた思考が覚醒して、慌てて桐椰くんを見上げるけどそっぽ向いて後は任せたとばかり。なんだと。
目の前の多々羅さんは目を輝かせている。こんなイベントを待ってましたとばかりに。仕方ない。すぅ、と新鮮な空気を肺に入れて、少し気分を整える。
「ばれちゃったものは仕方ないですけど……私も桐椰くんが不良ぶってるくせに実は弟をカツアゲから守るために不良っぽくし始めたって話はなかなか良いお兄ちゃんだなぁって思ったのは本当です」
「だからテメェは余計なこと言うんじゃねーよ!」
「あと甘いもの好きで可愛いと思うのも本当です。良いお父さんになってくれそうだなぁとか」
「頼むから黙ってくれよ……」
公衆の面前で私の頬を抓ることもできない桐椰くんが額を押さえて俯いている。まぁ、もうどうしようもないよね。ふぅ、と息を少し吐いた。足が段々地盤を失ってきたようにふらつく。
「でも本当に桐椰くんの彼女になる人は幸せなんじゃないかなーと思います。だって危ない目に遭ったら死に物狂いで助けてくれますよ。本気で怒ってくれますよ。友達大事で義理堅いです。口は悪いけどお人好しだしめちゃくちゃ優しいです」
あぁ、もう喋ることなんてないな……。これくらいでポジキャンは勘弁してください、リーダー。
「桐椰くんの彼女になったら、どんな将来でも不幸の心配だけはないっていうのは本当ですから……」
疲れついでによいしょと桐椰くんの腕に凭れた。私の散々なコメントで反応に困っていた桐椰くんが鬱陶しそうな顔で振り向いて――それなのに、一瞬で青ざめた。
「おい!」
「え、あれ? 桜坂さん、大丈夫ですか? ちょっ……ちょっと担架! 担架お願いします!」
「大丈夫、です……」
マイクを切って裏方に慌てて叫ぶ多々羅さんを制止する。きっと投票が終わるまであと少し。あと少しくらいなら、座っておけば平気だ。
でも体は限界を訴えてるらしく、ウエストを掴んで支えてくれる桐椰くんの手がなければとっくに倒れてた。私の顔色がどうかは知らないけれど、桐椰くんこそまさに顔面蒼白だ。



