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「ねー遼くん、これからどうしたらいいかな」
「票数? 知らねーよ、総達が裏で根回しするのを待つしかねーだろ」
「さすが御三家はぬかりないね……」
「人聞き悪ぃな」
どうやらBCCが実質生徒会と御三家の張り合いだというのは厳然たる事実らしく、私達と蝶乃さんペア以外にはちょろちょろっと票が入っているだけだ。花高の生徒数は確か七百人弱。残る生徒の票数は四百程度……。外部客がいることも含めればまだまだ勝負は動くけれど、そこを確実に手に入れるためにはどうすればいいか……。
「お互いとんとん、ってところだね」
蝶乃さんと桐椰くんを挟んで、何故か鹿島くんは私に話しかけてきた。鹿島くんは何かと私に慣れ慣れしいけれど、本当に私は鹿島くんと関わった覚えがない。極力喋りたくないけれど、気分が悪いのを押さえながらよいしょと顔を出す。
「……あのう、鹿島くん、どこかでお会いしました?」
「仮にも彼氏がいる前でそれはないんじゃない?」
「いえそんなつもりはないんですけど、生徒会長も副会長に負けず劣らず妄想力が激しいんですね」
ついでに貶した蝶乃さんがこめかみに青筋を浮かべているけれど、鹿島くんは柔和で余裕の笑みを浮かべるだけで何も反応しない。どうにもぱっとしない人だ……とても生徒会のトップには見えない。
「桐椰、御三家には何か策でもあるの?」
「知るかよ」
「そう冷たい反応をするなよ、元カノの彼氏だからって」
「関係ねーよ! つか、お前ら付き合ってんだな。てっきりこのためだけにペア組んでるんだと思ってたぜ」
心底興味なさそうに、ただの世間話程度の意味すらないように、桐椰くんは欠伸を噛み殺しながら言う。最初の緊張はどこへやら、いつもの太々(ふてぶて)しさが戻ってしまって可愛げがない。ふん、と蝶乃さんは鼻で笑った。
「そんなわけ。このBCCで完全な異端は貴方達だけよ」
「テメェらが要求したんだろ、文句は言わせねーよ」
「そうね」
「あ、遼くん、私達の票が上回り始めたよ」
「え?」
頓狂な声と共に振り向いたのは桐椰くんではなく蝶乃さんだ。振り向いた先に移る鹿島くんと蝶乃さんの点数は一六〇七〇点、桐椰くんと私の点数は一九三〇〇点。他チームは未だに二〇〇〇点だったり三〇〇〇点だったりを彷徨っているから、完全に私達が票を食い合っているというわけだ。桐椰くんは「へぇ」とあまり驚きのない感嘆の声を発した。



