第一幕、御三家の桜姫



「桜坂も。あんまり桐椰に夢中になると後が辛いかもよ?」

「はぁ。よく分からないけど遼くんに夢中になるところから有り得ないから大丈夫だけど」

「ありがたいけど腹立つな」

「……まぁ、そう思うのは勝手だけど。のめりこんだ後に捨てるのは辛いだろうよ?」

「……どういうこと?」


 捨てる? 捨てられるじゃなくて? 透冶くんの事件の真実が発覚して、用済みになった私を御三家が捨てるのは分かる。でも私が御三家を捨てることなんてない……はずだ。少なくとも私に得はないのだから。(いぶか)し気に鹿島くんを見つめるけれど、不敵につり上がったその口角からは何の答えも得られなかった。


「そんなことより、単純にこの答えは見物(みもの)ね。桜坂さん、随分派手に盛ってきたけど、それでどれだけ男子票が動くかしら?」

「テメェの盛り方に比べたら微々たるもんだから安心しろよ」

「……だからアタシは貴方を捨てたのよ」


 苦虫でも噛み潰したような表情で蝶乃さんは吐き捨てた。別に桐椰くんだって蝶乃さんに告白されて付き合い始めたわけだし、付き合ってるうちに本当に好きな人もできちゃったみたいだし、愛想をつかされたのは蝶乃さんなのでは、なーんて思うけど、桐椰くんが黙って言われているのだから私は口を出せない。負け惜しみのように蝶乃さんは私を頭から爪先まで視線だけで観察する。


「たかだか数万のドレスを着てるような女と勝負する気なんてないわ。その意味では、桜坂さんが一番張り合ってはいるかもね。目の利く生徒が多いといいわね」


 再び見上げたモニターには七三七〇点に到達した鹿島くんと蝶乃さんの得点と、四〇〇〇点になった直後の桐椰くんと私の得点が映っていた。勝負は中々厳しいようだ。またすぐに視線を戻す。

 そこで、順繰りにインタビューしていた多々羅さんが鹿島くんと蝶乃さんのところにやって来る。


「さて、お次は生徒会ペアにお尋ねしましょう。聞けば、生徒会のお二人は付き合いも長いのだとか。今回、お互いに新発見したところなんてありますか?」

「歌凛が料理上手ってことですかね。紅茶が好きで、お菓子をよく作っているのは知ってたんですけど。家庭的なご飯も意外と美味しいんだなって驚きました」

「ちょっと、意外は余計でしょ」


 はは、と観客の中から小さな笑いが起こる。相変わらず鹿島くんの喋りは凡庸だ。なんでこの人があの生徒会を束ねるトップなんだろう、と首を傾げてしまうほど。松隆くんなんて、その腹黒さとか、計算し尽くした冷徹さとか、上手い愛想の振りまき方とか、まさにリーダーなのに。

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