第一幕、御三家の桜姫



「わかんないよ、花高はお金持ち多いから。どうだ明るくなったろうって万札に火を点けるその手にキュンとするとかあるかもよ?」

「お前実は学校の連中馬鹿にしてるだろ」

「本当に。小学生レベルなのは桜坂さんの頭くらいよ」


 ひょいと、蝶乃さんが私達の様子を覗き込む。その赤いドレスのばっくり開いた胸元が見えそうだけれど、ほんの僅かしか起伏がなくて「蝶乃さんの体も小学生レベルですよ!」と精一杯哀れな目を向けて反抗した。でも蝶乃さんの目は黒仕様の桐椰くんに夢中だ。


「どうして黒染めしてるの?」

「うるせーな、コンセプトだよ。大体話しかけてくんな、敵同士だぞ」

「敵同士話しちゃいけないなんて決まりはないじゃない。生徒会に入ってくれればこんなことしないで済んだのに」

「テメェの下僕なんざ御免だね。それこそ死んでもな。貧相な体見せてんじゃねーよ」

「そうねぇ、確かに桜坂さんは胸だけは恵まれてるものね」


 あ、桐椰くんの目が泳いだ。


「遼くんのスケベ」

「今のは俺悪くねぇだろ! だったらんな服着てくんじゃねーよ!」

「だってよしりんさんがこれ着ろって言うんだもん」

「それでももっと何かあっただろ! 目のやり場に困るんだよ!」


 はぁ、桐椰くんが私をあまり見なかったのはそういうわけか……。健全過ぎて確かに可愛いな、桐椰くん。ちらとモニターをまた見ると、御三家の得点が二四〇〇点まで増えていた。松隆くんと月影くんだけだと計算が合わないから、どうやら御三家の味方は増えているようだ。生徒会の得点は五四七〇点まで増えてて、引き離される一方みたいだけれど。


「まぁ桐椰、桜坂に夢中になるのもほどほどにね」

「あぁ?」


 唐突に口を挟んだ鹿島くんに、桐椰くんが剣呑な声を上げる。それもそうだ、その忠告は的外れにもほどがある。ただ桐椰くんに答えることもなく、ごくごく平凡な紳士のように正装している鹿島くんは私に(わず)かに顔を向けた。

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