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「桜坂さんも! やっぱり桐椰くんのそんなところが可愛いと?」
「あ、はい、そうですね。コーヒー飲めないところとか、甘いもの好きなのに恥ずかしくて頼めないところとか、可愛いなぁって思います」
「おいテメェ!」
「駄目だよ遼くん、大きい声出しちゃ」
バラされたくないことを暴露されてしまって、狼狽した桐椰くんは怒鳴るけれど、逆効果だ。本当なんだ……、と女子の目が更に母性のようなものを擽られている。多々羅さんだって「えー、そうなんですかー?」と司会者の特権とばかりに桐椰くんの顔ばかり見ているし。
「ではそんな桐椰くんと、桜坂さんはどんな将来を歩みたいですか?」
「将来ですかぁ」
想定済みの質問で、「やっぱりお年寄りになっても手を繋げるような仲良しでいたいですね」とでも答える予定だった。だから口を開いたのに――気分が悪いとかそんなの関係なく、ちょっとだけ言葉がつっかえた。
桐椰くんは、どうして口から出任せで済ませなかったのだろう。まぁ、一応、桐椰くんは私を恋人として好きなわけではないけれど、私がすぐ憤慨してみせるのも、騙されたって顔に出すのも、誤魔化しきれないと踏めば煙に巻くのも本当だ。そして、私は桐椰くんのことを「嫌いじゃないよ」となら言ったことがある。桐椰くんは自分を好きだと言ってくれる人を好きだと話していたのだから、それだけに忠実に言えば「俺を好きだと言ってくれること」で良かったのに。
私は、御三家との関係を体よく言い換えたのに。
馬鹿だなぁ、桐椰くんは。そう口腔で呟いた。
「……遼くんの夢が、父親になることらしいんです」
ぎょっと、桐椰くんがそのぱっちりした目を更にひん剥いて今にも口を塞ぎたいと言わんばかりに手を震わせた。
「お母さんと仲良しで、休みの日になったら子供とじゃれて、運動会ではヒーローで、って父親は、私の憧れなんです。そんな父親に遼くんはなりたいって話してくれました。遼くんと結婚したら、娘はお父さんのお嫁さんになるって言ってくれて、息子は自分にとってのヒーローはお父さんだって言ってくれるんじゃないかなーって思ったんです。そんな優しくて幸せなおうちでお母さんになれたら、お金が沢山なくても、偶に腹が立つことがあっても毎日幸せだなぁって思うんです」
まぁ、これは、義理ですよ、桐椰くん。恨むなら、私に誠実したことを恨みなよ。
「そんな遼くんと歩けたら、どんな将来でも幸せです」
私が桐椰くんとそうなることはないけれど、きっとそうなる女の子は幸せだ。逃した魚は大きかったと思うよ、蝶乃さん。
「だから私は、そんな桐椰くんが好きです」
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