「じゃあそんな桐椰くんのどんなところが好きですか?」
うわぁー、面倒な質問来ちゃったよー、と私と桐椰くんは心でげんなりしながら顔を見合わせる。絶対くると思っていた質問、答えを用意していないわけがない。でもいざ喋るとなれば話は別だ。ついでに桐椰くんが抱えている不安は、私が台本を一切教えていないという点にあるのだろう。
「やっぱり損得勘定抜きで弱そうな子を助けちゃうところですかね」
キャーだかイヤーだかなんだかよく分からない黄色い悲鳴が上がる。桐椰くんイケメン、キュンキュンする、なんて声も混ざっているから、私に対する嫉妬じゃなくて桐椰くんへ向けられた言葉だ。その内実は透冶くんの死の真相を暴くためという思いっきり損得計算し尽くされたものだけれど、BCCのためにも幻想は壊さないようにしなければ。
「優しいですねぇ、桐椰くん! では桐椰くんは桜坂さんのどんなところが?」
「……………………純粋なところ」
物凄く沈黙した上での重々しい声。思わず吹き出しそうになったけれど、そうもいかない。観客は「桐椰くんからののろけは要らない」と萎えた様子でテンションを下げていく。
「なるほど、因みにどんなところに純粋さを?」
「……すぐ怒るところとか、虐めたときの騙された!って表情とか、嘘が下手なところとか」
ぼそ、ぼそ、と呟くようにマイクに向かって答えながら、桐椰くんはこめかみの辺りに掌を当てて、その指先で黒い髪をくしゃりと僅かに握った。
僅かに泳ぐ視線まで含めて、照れたようなその仕草に、会場の女子にある激震が走った。そして桐椰くんは一度口を閉じ、僅かに瞑目し、やや自棄っぱちのように付け加えた。
「……あと好きなところは、こんな俺のことを嫌わないでいてくれること」
どくん、と。具合の悪さなんて吹き飛んでしまうくらい、心臓が高鳴った。あぁ、その表情は、誰が見たって反則だ。
モニターで大きく映された桐椰くんの表情に、会場の女子の心は間違いなく持っていかれた。女子の庇護欲というか母性というか、それを全力で刺激したに違いない。
「あ――っりがとう、ございます桐椰くん! 素敵な理由ですね! こんな彼氏さん可愛くて仕方ないですね!」
しかも照れて赤面して顔を背けて手で覆い隠している。その部分は多分素だ。多々羅さんの言葉も女子の心を正確に代弁したに違いない。



