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「では、桐椰くんから聞いてみましょう! お二人のドレスのコンセプトは?」
「……独立」
たった一言、僅かに震える唇で桐椰くんが答えた。
「御三家は生徒会に染まらない。そういう意味の“独立”だ」
花咲の実態を知らない外部客にとってはなんのことだか分からないだろう。ただ、分かっている花咲の生徒は、さっきとは別の意味で盛り上がり「出たよ、御三家」「無理に決まってんじゃん」という嘲笑と「やっぱりかっこいいなぁ」と生徒会の目を盗んだ本音が聞こえた。それを耳にした桐椰くんの指先から、ついに緊張が消えさったのを感じた。
ただ、見上げたその表情は、想像したよりも暗かった。瞳が爛々(らんらん)と輝くわけでもなく、愉快げに口角を吊り上げるわけでもなく……。声に抑揚があるだけで、その表情は真摯な敵意に満ちていた。あーあ、これでBCCが終わっても私の居場所は御三家にしかなくなりそうだ。
「え……えーと、桐椰くん、優勝への意気込み、ありがとうございました……。折角ですから、御三家の姫と呼ばれている桜坂さんにも聞いてみたいと思います」
そこで私にマイクが向けられた。桐椰くんが生徒会に喧嘩を売った後にコメントを求められたところで何も言うことなんてない。威張る生徒会役員の権力の源が親の金だというのなら、私の権力の源は御三家に尽きる。
「桜坂さんはどうしてBCCに?」
「えー……っと、もちろん、私も生徒会とは敵対していた身ですし」
父兄もいる場所で生徒会に虐められていたとまでは言えない。桐椰くんも生徒会派閥があることを明言したに過ぎなかったのだから。ただ、さすがにカップルコンテストに出てそれだけじゃ済まされなさそうだ。
「あとは、転校してきたばっかりで一人だった私を助けてくれた遼くんと一緒にカップルコンテストに出たかったので」
バキバキッ、と私の指先が音を立てた。痛い痛い痛い。会場の空気がまた変わると共に、桐椰くんの殺意に満ちた目が降って来る。あぁ、カップルごっこが終わったらどのくらい頬をつねられるんだろう……。取り敢えず今はエスコートされていた手が握りしめられていて痛い。体を締め付けるドレスなのに体調が悪いのを堪えてるんだからそのくらい許して。
「それは素敵ですね~、助けてくれたときの桐椰くんはやはり颯爽とカッコよく?」
「それはもう、あれで好きにならない女の子なんていないと思います」
多々羅さんは漸くBCCらしい話題が出たとばかりに俄然勢いづいた。真実は、桐椰くんが赤井くんに対して俺様の席を用意しろと脅迫したり、取引をしようと松隆くんに持ちかけられたり、お前に退路はないと月影くんに鼻で笑われたりと散々なものだけれど。
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