第一幕、御三家の桜姫


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「アンタ自分の(がたい)の良さを自覚しろよ……つかアンタがオネェになって以来寝技かけられてた日々思い出してぞっとするわ」

「そうね……言われてみれば本当の自分に気付いたのはあの頃だったのかも……」

「やめろ! 圧倒的に自分よりガタイがいいヤツに襲われる気持ちがテメェに分かるか!?」

「そうだよ遼くん、だから私のこと襲わないでね」

「襲うわけねーだろ、いつにもまして自意識過剰だなテメェは」


 桐椰くんとの遣り取りのせいでみんなが私達に気付いた。注目を集めてしまった挙句、よしりんさんがそこそこ男として良い見た目なのであらぬ誤解も生まれようというものだ。桐椰くんはよしりんさんの手が届かないぎりぎりの位置で止まる。


「で……、コイツはこれでいいのかよ……」

「あら、アタシのコーディネートに文句つけようっての?」

「文句のつけようがねーだろ、マントなんかで隠されてんだから」


 そう、私は未だドレスの上に薄手のガウンを羽織っている。理由は単純に寒いからだ。燕尾服の桐椰くんにその心配はない。見えない服に興味を持っても仕方がないとばかりに桐椰くんは私の顔を眺める。


「相変わらずお前の顔すげぇな。よくここまで変わるもんだ」

「ちょっと、女性に向かって何なのその反応は。綺麗になったの一言くらい言えないの?」

「コイツにんなこと言っても仕方ねーだろ。何だよ今日はどいつもこいつも……」


 俺は悪くないのに、と桐椰くんは言いながら燕尾服のズボンのポケットに手を突っ込もうとして「形が崩れるからやめろって言われただろうが!」とよしりんさんの素の恫喝を食らい、すぐさま気を付けをする。面白い。


「よしりんさんは素でも十分魅力的ですね」

「あら可愛いこと言ってくれるじゃない。さっきはああいったけど実は女の子もイケるわよ」

「堂々とそういうこと言うのやめろ怖いから!」


 標的は私だったのになぜか桐椰くんが慄いている。よりしんさんは「冗談よ、さすがにJKに手を出すのは犯罪臭が拭えないわ」と肩を竦めて返した。


「で、貴方達はいつ登壇するの?」

「あぁ、そうだな……、五分後くらいか?」

「は? だったら早く行くわよ。急いで転びでもしたら大変だわ」


 ほらエスコート、とよしりんさんがまた親指で道を示して見せる。桐椰くんは「分かってるよ」と短く返事をしていつもよりゆっくり歩きだす。


「……お前、体調は?」

「もうばっちりです」

「あっそ」


 言いながらも桐椰くんはいつもより随分ゆっくり歩いてくれている。履き慣れない革靴が窮屈だからなのか、優しさなのか、よくわからないけれど頭痛が収まらないのでありがたい。ついでに見慣れない黒髪は本人も慣れてないのだろうか、どこか落ち着きがない。