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「貴女と遼ちゃんはベストカップルにはなれないわ。でもBCCで優勝できないとは言ってないわ。間にあるのか友情だろうが主従だろうが、美しいと思えば選ばれるのよ。そんで勝てば官軍よ」
「……応援してくれてるなら最初からそう言ってくれればいいじゃないですか」
「誰も応援してるなんて言ってないわ、アタシの所感よ」
はい手袋、と二本の手袋を渡された。もう前を向いていいらしい。よいしょ、よいしょ、とそれを嵌めていると「あとは髪と化粧ね。アタシの手にかかれば三時半には余裕で仕上がるわ」と得意げな声が離れて行った。その隙に鏡を見ると――なんとも、普段の自分からは想像もつかない格好になっている。
「はは……遼くん、笑いそうだな」
そっと、鏡に触れてみる。この恰好を見たら、あの人はなんて言うんだろう。文化祭に来てるはずなんて、ないけれど。
「ちょっと、まだ見惚れるほど変身できてないはずよ! こっち来て! あっいや歩くな! 裾を持つから引っ掛けるなよ!」
慌ててストップをかけたよしりんさんは素が出ている。歩み寄って来ると「化粧先にしても良かったけど貴女絶対に衣装に化粧の粉つけるものね」と失礼なことを言われたし、もうオネェさんに戻っていた。
「……ところでよしりんさん、あの、このドレスのコンセプトは?」
「見て分からないの。ウエディングドレスよ」
「……そうですか……こんなウエディングドレス初めて見ました……」
「一目見たときから似合うと思ってたのよ。大丈夫、自信持ちなさい」
低い声が励ましてくれるけれど、なんとも複雑な気持ちだ。鏡台の前で、よしりんさんの手によって髪が結われていくのをじっと眺める。花飾りは――桐の花。
「遼ちゃんとカップルで出るっていうんだから丁度いいでしょ。総ちゃんだったら松結いを飾る羽目になってたわよ」
「……ドレスに和系の飾りっていう間抜けさがよく似合う気がします」
「分かってるじゃないの。でもそれじゃダメなのよ、今回は」
励まされてるのか貶されてるのかよく分からないまま、よしりんさんの手によって次々と変化していく、私の姿。
「いい? この恰好で二番にでもなったら許さないわよ。特に蝶乃の娘の度肝は抜いてやりなさい」
――最終決戦を、迎える。
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